多重ゼータ値の微分関係式について
この記事の続きです。
まずは$n$階微分関係式について掘り下げていきましょう。
$n$階微分関係式と完全Bell多項式
まず重要になってくる定理はこちらです。
左辺は簡単に求められますが、問題は右辺です。
右辺を求めるためには級数を複数回微分しないといけません。
その中で出てくるのが次の関数です。
$$ F(s) := \frac{\Gamma(s+1)}{\Gamma(s+j+k_{1})} $$
この関数の $n$ 階微分を求めることになり、非常に厄介です。
この関数は微分すると指数関数のような振る舞いをします。
$s$ で一回微分してみると、
\begin{eqnarray} \frac{\text{d}}{\text{d}s} F(s) &=& F(s) (\zeta_{\leq s}(1)-\zeta_{\leq s+j+k_{1}-1}(1)) \\ &=& F(s)z(s) \end{eqnarray}
となります。
$z(s) := \zeta_{\leq s}(1)-\zeta_{\leq s+j+k_{1}-1}(1)$ としました。
何回か微分していくうちに規則を見つけ、そこで完全Bell多項式を使うアイデアに至りました。
このとき次の美しい定理が成り立ちます。
ここで両辺 $s=0$ とすることを考えると $F(0)=\dfrac{1}{\Gamma(j+k_{1})}=\dfrac{1}{(j+k_{1}-1)!}$ となります。
同じように
$$ z_{i}:=\left. z^{(i-1)}(s) \right |_{s=0}=( -1)^{i} \zeta_{\leq j+k_{1}-1}(i) $$
となります。そうすると
$$ \left. F^{(n)}(s) \right |_{s=0}=\frac{1}{\Gamma(j+k_{1})}B_{n}(z_{1},\cdots,z_{n}) $$
と書けますね。
ここで、それぞれの $z_{i}$ を分解することを考えてみます。
具体的には
$$ z_{i}= ( -1)^{i} \zeta_{\leq j+k_{1}-2}(i)+ \frac{( -1)^{i}}{(j+k_{1}-1)^{i}} $$
と分解し、$x_{i} := ( -1)^{i} \zeta_{\leq j+k_{1}-2}(i), \, \, \, y_{i} := \dfrac{( -1)^{i}}{(j+k_{1}-1)^{i}}$ とします。
ここで次の定理が活躍します。
ここで $X_{i} := \zeta_{\leq j+k_{1}-2}(i), \, \, \, Y_{i} := \dfrac{1}{(j+k_{1}-1)^{i}}$ とします。
また、 $\mathbf{k}^{\ast n}:= \underbrace{\mathbf{k} \ast \cdots \ast \mathbf{k}}_{n \, \text{times}}$ という記法を使います。
これらの結果を合わせ、
\begin{eqnarray} \left. F^{(n)}(s) \right |_{s=0}&=&\frac{1}{\Gamma(j+k_{1})}B_{n}(z_{1},\cdots,z_{n}) \\ &=&\frac{1}{(j+k_{1}-1)!} B_{n}(x_{1}+y_{1},\cdots,x_{n}+y_{n}) \\ &=& \frac{1}{(j+k_{1}-1)!} \sum_{i=0}^{n} \binom{n}{i} B_{i}(x_{1},\cdots,x_{i})B_{n-i}(y_{1},\cdots,y_{n-i}) \\ &=& \frac{1}{(j+k_{1}-1)!} \sum_{i=0}^{n} \sum_{1p_{1}+\cdots+i p_{i}=i} \sum_{1q_{1}+\cdots+(n-i) q_{n-i}=n-i} \binom{n}{i} i! (n-i)! \prod_{l=1}^{i} \prod_{m=1}^{n-i} \frac{x_{l}^{p_{l}}}{(l!)^{p_{l}}p_{l}!} \frac{y_{m}^{q_{m}}}{(m!)^{q_{m}}q_{m}!} \\ &=& \frac{1}{(j+k_{1}-1)!} \sum_{i=0}^{n} \sum_{\substack{1p_{1}+\cdots+i p_{i}=i \\ 1q_{1}+\cdots+(n-i) q_{n-i}=n-i}} n! \prod_{l=1}^{i} \prod_{m=1}^{n-i} \frac{1}{(l!)^{p_{l}}p_{l}!} \frac{1}{(m!)^{q_{m}}q_{m}!} x_{l}^{p_{l}}y_{m}^{q_{m}} \\ &=& \frac{n!}{(j+k_{1}-1)!} \sum_{i=0}^{n} \sum_{\substack{1p_{1}+\cdots+i p_{i}=i \\ 1q_{1}+\cdots+(n-i) q_{n-i}=n-i}} \prod_{l=1}^{i} \prod_{m=1}^{n-i} \frac{( -1)^{lp_{l}}}{(l!)^{p_{l}}p_{l}!} \frac{( -1)^{m q_{m}}}{(m!)^{q_{m}}q_{m}!} X_{l}^{p_{l}}Y_{m}^{q_{m}} \\ &=& \frac{( -1)^{n}n!}{(j+k_{1}-1)!} \sum_{i=0}^{n} \sum_{\substack{1p_{1}+\cdots+i p_{i}=i \\ 1q_{1}+\cdots+(n-i) q_{n-i}=n-i}} \prod_{l=1}^{i} \prod_{m=1}^{n-i} \frac{1}{(l!)^{p_{l}}p_{l}!} \frac{1}{(m!)^{q_{m}}q_{m}!} X_{l}^{p_{l}}Y_{m}^{q_{m}}. \end{eqnarray}
これを使って多重ゼータ値の級数の微分の計算を進めます。
\begin{eqnarray} \left. \zeta^{(n)}_{>s}(\mathbf{k}) \right |_{s=0} &=& \sum_{j=0}^{\infty} \frac{(j+k_1-2)!\zeta_{\leq j+k_1-2}((\mathbf{k}^{\dagger})^{[1]})}{(j+k_1-1)^{\lVert \mathbf{k}^{\dagger} \rVert_1-1}}\frac{\text{d}^{n}}{\text{d}s^{n}} \left. \frac{\Gamma(s+1)}{\Gamma(s+j+k_1)} \right|_{s=0} \\ &=& ( -1)^{n}n! \sum_{j=0}^{\infty} \frac{\zeta_{\leq j+k_1-2}((\mathbf{k}^{\dagger})^{[1]})}{(j+k_1-1)^{\lVert \mathbf{k}^{\dagger} \rVert_1}}\sum_{i=0}^{n} \sum_{\substack{1p_{1}+\cdots+i p_{i}=i \\ 1q_{1}+\cdots+(n-i) q_{n-i}=n-i}} \prod_{l=1}^{i} \prod_{m=1}^{n-i} \frac{1}{(l!)^{p_{l}}p_{l}!} \frac{1}{(m!)^{q_{m}}q_{m}!} X_{l}^{p_{l}}Y_{m}^{q_{m}} \\ &=& ( -1)^{n} n! \sum_{i=0}^{n} \sum_{\substack{1p_{1}+\cdots+i p_{i}=i \\ 1q_{1}+\cdots+(n-i) q_{n-i}=n-i}} \zeta( \lVert \mathbf{k}^{\dagger} \rVert _{1}+n-i,(\mathbf{k}^{\dagger})^{[1]} \ast (i)^{\ast p_{i}}) \prod_{l=1}^{i} \prod_{m=1}^{n-i} \frac{1}{(l!)^{p_{l}}p_{l}!} \frac{1}{(m!)^{q_{m}}q_{m}!}. \end{eqnarray}
これにより次の定理が得られました。
試しに $n$ に整数を代入して遊んでみましょう。
$n=0$ のとき
$$ \zeta(\mathbf{k})=\zeta(\mathbf{k}^{\dagger}) $$
となります。
これは双対性です。
$n=1$ のとき
$$ \zeta(\text{d}\mathbf{k})= \zeta(\lVert \mathbf{k}^{\dagger} \rVert_{1}+1, (\mathbf{k}^{\dagger})^{[1]})+\zeta(\lVert \mathbf{k}^{\dagger} \rVert_{1}, (\mathbf{k}^{\dagger})^{[1]} \ast (1) ). $$
$n=2$ のとき
\begin{eqnarray} &&\zeta(\text{d}^{2}\mathbf{k}) \\ =&&2\zeta(\lVert \mathbf{k}^{\dagger} \rVert_{1}+2, (\mathbf{k}^{\dagger})^{[1]})+2\zeta(\lVert \mathbf{k}^{\dagger} \rVert_{1}+1, (\mathbf{k}^{\dagger})^{[1]} \ast (1) )+\zeta(\lVert \mathbf{k}^{\dagger} \rVert_{1}, (\mathbf{k}^{\dagger})^{[1]} \ast (1)^{\ast2} )+\zeta(\lVert \mathbf{k}^{\dagger} \rVert_{1}, (\mathbf{k}^{\dagger})^{[1]} \ast (2) ). \end{eqnarray}
このように、$n$ の値によって数多の関係式が得られます。
微分関係式の拡張
ここでは $n$ 階微分関係式をさらに一般化していきます。
許容インデックス $\mathbf{k},\mathbf{l}$ に対する次の恒等式を使います。
$$ \text{d}(\mathbf{k} \ast \mathbf{l})=\text{d} \mathbf{k} \ast \mathbf{l}+\mathbf{k} \ast \text{d} \mathbf{l}. $$
これを複数回繰り返すことにより次が得られます:
$$ \text{d}^{n}(\mathbf{k}\ast \mathbf{l})=\sum_{i=0}^{n} \binom{n}{i} \text{d}^{i} \mathbf{k} \ast \text{d}^{n-i} \mathbf{l}. $$
両辺に写像 $\zeta$ を作用させることにより、
$$ \zeta (\text{d}^{n}(\mathbf{k}\ast \mathbf{l}) )=\sum_{i=0}^{n} \binom{n}{i} \zeta (\text{d}^{i} \mathbf{k} \ast \text{d}^{n-i} \mathbf{l}). $$
ここまではインデックス間の恒等式なので自明な関係式しか得られません。なので
$$ Z_{n}(\mathbf{k}):=n! \sum_{i=0}^{n} \sum_{\substack{1p_{1}+\cdots+i p_{i}=i \\ 1q_{1}+\cdots+(n-i) q_{n-i}=n-i}} \zeta( \lVert \mathbf{k}^{\dagger} \rVert _{1}+n-i,(\mathbf{k}^{\dagger})^{[1]} \ast (i)^{\ast p_{i}}) \prod_{l=1}^{i} \prod_{m=1}^{n-i} \frac{1}{(l!)^{p_{l}}p_{l}!} \frac{1}{(m!)^{q_{m}}q_{m}!} $$
とし、左辺を置き換えることにより
$$ Z_{n}(\mathbf{k} \ast \mathbf{l})=\sum_{i=0}^{n} \binom{n}{i} \zeta (\text{d}^{i} \mathbf{k} \ast \text{d}^{n-i} \mathbf{l}). $$
という関係式が得られました。
定理として明文化しておきましょう。
これでも $n$ に整数を代入して遊んでみましょう。
$n=0$ のとき、
$$ \zeta((\mathbf{k} \ast \mathbf{l})^{\dagger})=\zeta(\mathbf{k}\ast \mathbf{l}). $$
$\mathbf{l}=\varnothing$ とすればただの双対性になります。
$n=1$ のとき
$$ \zeta(\lVert (\mathbf{k} \ast \mathbf{l})^{\dagger} \rVert_{1}+1, ((\mathbf{k} \ast \mathbf{l})^{\dagger})^{[1]})+\zeta(\lVert (\mathbf{k} \ast \mathbf{l})^{\dagger} \rVert_{1}, ((\mathbf{k} \ast \mathbf{l})^{\dagger})^{[1]} \ast (1) )= \zeta(\text{d} \mathbf{k} \ast \mathbf{l} + \mathbf{k} \ast \text{d} \mathbf{l}). $$
ここで $\mathbf{k}=\mathbf{l}=(2)$ として遊んでみます。
$(2) \ast (2) =2(2,2)+(4)$ でその双対は $2(2,2)+(2,1,1)$ です。
よって左辺は
\begin{eqnarray} &&2\zeta(3,2)+\zeta(3,1,1)+2\zeta(2,(2) \ast (1) )+\zeta(2,(1,1) \ast(1) ) \\ =&&2\zeta(3,2)+\zeta(3,1,1)+2\zeta(2,2,1)+2\zeta(2,1,2)+2\zeta(2,3)+\zeta(2,2,1)+\zeta(2,1,2)+3\zeta(2,1,1,1) \\ =&& 2\zeta(3,2)+\zeta(3,1,1)+3\zeta(2,2,1)+3\zeta(2,1,2)+2\zeta(2,3)+3\zeta(2,1,1,1). \end{eqnarray}
右辺は
\begin{eqnarray} \zeta(\text{d} (2) \ast (2) + (2) \ast \text{d} (2) ) &=& \zeta(2(3) \ast (2) + (2) \ast 2(3) ) \\ &=& 4\zeta(2,3) + 4\zeta(3,2) + 4\zeta(5). \end{eqnarray}
左辺と右辺は等しくなります。
微分幾何入門(森北出版)の解説 <第8章 -一般相対性理論->
この記事の続きです。
mitsuki-science.hatenablog.com
なお、書籍では7章でリーマン幾何が取り扱われています。
ですが都合により7章は省略させてください。
書籍での7章の解説をもとに一般相対性理論へと進んでいくので、まずは書籍の7章を読んでいただければと思います。
この章では一般相対性理論を扱います。
保存量
第6章ではラグランジアンとオイラー・ラグランジュ方程式を扱いました。
少し復習しましょう。
系のラグランジアン $L$ が与えられているとき、その運動を記述する位置と速度の関数 $(q^{1},\cdots,q^{D},\dot{q}^{1},\cdots, \dot{q}^{D})$ は次の方程式で与えられます:
$$ \frac{\partial L}{\partial q^{i}} - \frac{\text{d}}{\text{d}t} \frac{\partial L}{\partial \dot{q}^{i}}=0 \, \, \, (1 \leq i \leq D). $$
ここでラグランジアン $L$ が時間 $t$ の関数ではない、つまりラグランジアンが $L(\boldsymbol{q},\dot{\boldsymbol{q}})$ であって $L(\boldsymbol{q},\dot{\boldsymbol{q}},t)$ ではない場合を考えましょう。
この場合は連鎖律から
$$ \frac{\text{d}L}{\text{d}t}=\frac{\text{d}q^{i}}{\text{d}t} \frac{\partial L}{\partial q^{i}}+\frac{\text{d}\dot{q}^{i}}{\text{d}t} \frac{\partial L}{\partial \dot{q}^{i}} $$
とでき、オイラー・ラグランジュ方程式から $\dfrac{\partial L}{\partial q^{i}}=\dfrac{\text{d}}{\text{d}t} \dfrac{\partial L}{\partial \dot{q}^{i}}$ なので右辺は
$$ \dot{q}^{i}\frac{\text{d}}{\text{d}t} \dfrac{\partial L}{\partial \dot{q}^{i}}+\frac{\text{d}\dot{q}^{i}}{\text{d}t} \frac{\partial L}{\partial \dot{q}^{i}}=\frac{\text{d}}{\text{d}t} \left( \frac{\partial L}{\partial \dot{q}^{i}} \dot{q}^{i} \right) $$
とできます。よって $\dfrac{\text{d}L}{\text{d}t}=\dfrac{\text{d}}{\text{d}t} \left( \dfrac{\partial L}{\partial \dot{q}^{i}} \dot{q}^{i} \right)$ より
$$ \frac{\text{d}}{\text{d}t} \left( \frac{\partial L}{\partial \dot{q}^{i}} \dot{q}^{i}-L \right)=0 $$
が得られます。この $H := \dfrac{\partial L}{\partial \dot{q}^{i}} \dot{q}^{i}-L$ は時間に依存しない保存量で、エネルギーと呼ばれます。
これはエネルギー保存則に対応します。
他にも運動量保存則や角運動量保存則などを導くことができます。
詳しくは書籍を見てください。
測地線方程式
慣性の法則という物理法則があります。
外力が働かない物体は停止するか等速直線運動するというものです。
一般相対性理論では重力は「力」ではなく時空を歪ませるもので、結果として物体が引き寄せられると考えます。
その経路は最短距離で与えられるのですが、重力により歪んだ時空は複雑に曲がっているものであり、点と点の最短経路(測地線)を求めるのは難しいです。
ですが計量 $g_{\mu \nu}$ が与えられていれば測地線を求めることは可能です。
やってみましょう。
一般のリーマン多様体での曲線の長さ(作用)は次で与えられるのでした:
$$ S= \int \sqrt{g_{\mu \nu} \frac{\text{d} x^{\mu}}{\text{d} \lambda} \frac{\text{d} x^{\nu}}{\text{d} \lambda}} \text{d} \lambda. $$
ここで $\lambda$ はただのパラメーターです。
よってラグランジアンは $L=\sqrt{g_{\mu \nu} \dot{x}^{\mu} \dot{x}^{\nu}}$ です。
$\dot{x}^{\mu} := \dfrac{\text{d} x^{\mu}}{\text{d} \lambda}$ です。
実際にはマクローリン展開の一次の項で $L=\dfrac{1}{2}g_{\mu \nu} \dot{x}^{\mu} \dot{x}^{\nu}$ として同じ方程式が得られるのでそれでやってみます。
今得られた方程式こそが測地線方程式 (geodesic equation) です。
これは重力のみに引き寄せられて落ちていく物体の軌道を表すもので、ニュートン力学で言うところの慣性の法則に対応します。
この測地線方程式は位置 $x^{\mu}$ を速度 $\dot{x}^{\mu}$ と 加速度 $\ddot{x}^{\mu}$ とクリストッフェル記号 $\Gamma^{\tau}_{\nu \rho}$ から求める方程式です。
たとえばミンコフスキー計量 $(g_{\mu \nu}) =\text{diag}( -1,1,1,1)$ の場合、クリストッフェル記号はすべて消えて単純な方程式 $\ddot{x}^{\tau}=0$ になります。
その方程式の解は等速直線運動を表します。
測地線方程式は重力により曲がった時空での慣性の法則を表すと思えばいいでしょう。
アインシュタインの重力場方程式
いよいよ私達の最終目標、アインシュタインの重力場方程式を導きます。
アインシュタインの重力場方程式とはこれです:
$$ G_{\mu \nu}+\Lambda g_{\mu \nu}=\frac{8 \pi G}{c^{4}}T_{\mu \nu}. $$
まずはこの式の気持ちだけでも理解してみましょう。
この方程式の未知数は計量で、この方程式から計量を導かれます。
時空の計量がわかればその空間内の距離、角度、長さ、面積、体積などが一気に計算できます。
ですがこの方程式を解くのは難しいです。
なぜかというと、計量 $g_{\mu \nu}$ が未知数であるゆえに計量から導かれるリーマン曲率テンソルも未知数だからです。
$G_{\mu \nu}:= R_{\mu \nu}-\dfrac{1}{2}g_{\mu \nu}R$ はアインシュタインテンソルと呼ばれ、$R_{\mu \nu}=R^{\rho}_{\mu \rho \nu}$ はリッチテンソル、$R=g^{\mu \nu} R_{\mu \nu}$ はスカラー曲率です。
そして $\Lambda$ は変分をしたときに出てくる計量の定数で、宇宙定数とも呼ばれています。
$\Lambda g_{\mu \nu}$ はしばしば省略されますが、一応つけておきましょう。
また、$T_{\mu \nu}$ はストレス-エネルギーテンソルと呼ばれ、電磁場のファラデーテンソル $F_{\mu \nu}$ のように $4 \times 4$ の行列です。
各成分がそれぞれ意味を持った物理量と対応しています。
$G$ は万有引力定数、$c$ は真空中の光速です。
簡単のため以下より $\kappa:= \dfrac{8 \pi G}{c^{4}}$ とさせてください。
以上より、この式の意味は時空の曲率(すべて計量から導かれる)が物質場の質量やエネルギー、運動量などに対応するということです。
つまりは物質場が存在することにより曲率が発生する、物質が時空を歪ませるという解釈ができます。
この方程式から重力レンズ効果や重力波の存在などが予言されました。
実際、今まで一般相対性理論と矛盾する観測結果はひとつも見つかっていません。
というわけでさっそくこの方程式を導いてみましょう。
アインシュタインの重力場方程式を導くにはニュートンの重力場方程式と比較する方法もありますが、今回は書籍のようにアインシュタイン-ヒルベルト作用から導いてみます。
アインシュタイン-ヒルベルト作用とは次で定義される作用です:
$$ S=\int \left( \frac{R-2 \Lambda}{2 \kappa} +\mathcal{L}_{\text{M}} \right) \sqrt{-g} \, \text{d}^{4}x. $$
ここで $\mathcal{L}_{\text{M}}$ は物質場に対応するラグランジアンで、$g:=\det(g_{\mu \nu})$ は計量行列の行列式です。
今はローレンツ多様体(計量の行列式が負)を考えているので、ルートの中は正になり実数となります。
この作用を最小にする計量 $g_{\mu \nu}$ を求めるのが目標です。
いくつか補題を示しておきましょう。
もっとエレガントに示す方法もあるみたいですが、今回は直接計算で示しました。
これでようやくアインシュタインの重力場方程式が導けます。
これで長旅は終了です。
この方程式から導かれるシュヴァルツシルト解、重力レンズ効果などについては書籍や物理の文脈を読まれることをおすすめします。
お疲れ様でした。
微分幾何入門(森北出版)の解説 <第6章 -ゲージ理論->
この記事の続きです。
mitsuki-science.hatenablog.com
まだ読まれていない方は先にどうぞ。
*この記事は「微分幾何入門(森北出版)」の解説です。この記事の内容だけでは完全な学習になりません。必ず書籍を手元において学習を進めてください。
内積
いよいよゲージ理論の世界に足を踏み入れていきます。
この世界は(少なくとも私たちが認識できる範囲では)空間$3$次元と時間$1$次元で合わせて$4$次元の時空だと考えられます。
それを$4$次元多様体とすれば、局所的には $\mathbb{R}^{4}$と同一視できます。
まずは空間だけを考えて、つまり $\mathbb{R}^{3}$ での内積を考えてみましょう。
$\boldsymbol{v}=(v_{1},v_{2},v_{3})$ と $\boldsymbol{w}=(w_{1},w_{2},w_{3})$ の内積は $\langle \boldsymbol{v},\boldsymbol{w} \rangle=v_{1}w_{1}+v_{2}w_{2}+v_{3}w_{3}$ で定義されました。
(ゲージ理論の章では $\langle, \rangle$ は双対ペアリングではなく内積の意味で使われています)
この場合、$\langle \boldsymbol{v},\boldsymbol{w} \rangle = \delta^{\mu \nu} v_{\mu} w_{\nu}$ と書けます。
ここでもアインシュタインの縮約記法を使っていることに注意してください。
一般に $D$ 次元の実数空間 $\mathbb{R}^{D}$ であっても、$\langle \boldsymbol{v},\boldsymbol{w} \rangle = \delta^{\mu \nu} v_{\mu} w_{\nu}$ が成立します。
この場合の $\delta^{\mu \nu}$ のように内積の係数となるものを計量といいます。
後で示されるように、計量はテンソルなので計量テンソルとも呼ばれています。
ここで、のちのち複素数の内積も出てきます。
複素数の内積の定義は2通りあり、$\delta^{\mu \nu} \overline{v_{\mu}} w_{\nu}$ か $\delta^{\mu \nu} v_{\mu} \overline{w_{\nu}}$ です。
なぜ片方の複素共役を取るかというと、任意の複素ベクトル $\boldsymbol{v}$ に対して $\langle \boldsymbol{v}, \boldsymbol{v} \rangle$ は必ず$0$以上の実数になってほしいからです。
そうでなければベクトルのノルム(大きさ)が定義できません。
そこで今回は書籍に倣い複素数の内積を $\langle \boldsymbol{v}, \boldsymbol{w} \rangle = \delta^{\mu \nu} \overline{v_{\mu}} w_{\nu}$ で定めます。
2つの定義は複素共役で移り合うのでどちらをとっても構いません。
さて、内積を微分形式にも拡張し正規直交基底で $\langle \text{d}x^{\mu}, \text{d}x^{\nu} \rangle = \delta^{\mu \nu}$ としましょう。
さらに一般のテンソルや $k$-形式にも拡張できるでしょうか?
まずはテンソルの内積を定義します。
テンソル $S=S_{\mu_{1},\cdots,\mu_{k}}\text{d}x^{\mu_{1}} \otimes \cdots \otimes \text{d}x^{\mu_{k}},$ $T=T_{\nu_{1},\cdots,\nu_{k}}\text{d}x^{\nu_{1}} \otimes \cdots \otimes \text{d}x^{\nu_{k}}$ に対して、内積を
$$ \langle S, T \rangle := \sum _{\mu_{1}, \cdots, \mu_{k}} S_{\mu_{1},\cdots,\mu_{k}} T_{\mu_{1},\cdots,\mu_{k}} $$
で定めます。
実際にはテンソルの双線形性から構成されますが、ここでは明示的な式を与えておきましょう。
次に $k$-形式についてですが、 $\theta_{i}, \eta_{j}$ を正規直交基底の $1$-形式として $k$-形式を $\theta=\theta_{1} \wedge \cdots \wedge \theta_{k}, \eta=\eta_{1} \wedge \cdots \wedge \eta_{k}$ とします。
このとき、$\langle \theta, \eta \rangle := \det( \langle \theta_{i}, \eta_{j} \rangle)$ と定義します。
つまりは $\theta = \eta$ なら $\langle \theta, \eta \rangle=1, $ $\theta = -\eta$ なら $\langle \theta, \eta \rangle=-1, $ それ以外なら $0$ としているだけです。
$0$-形式 $f,g$ に対しては $\langle f, g \rangle = \overline{f}g$ と定めます。
これでノルム(大きさ)が定義できます。
ここで、正規直交基底は外微分の形で書かれるとは限らないので一般的には $1$-形式を $\langle \theta^{\mu}, \eta^{\nu} \rangle = \delta^{\mu \nu}$ と書いたほうがいいでしょう。
ひとまず今はおいておきます。
さて、$\mathbb{R}^{D}$ での体積形式 (volume form) を $\text{d} V_{E} := \text{d} x^{1} \wedge \cdots \wedge \text{d} x^{D}$ で定めます。
これでホッジ作用素が定義できます。
ホッジ作用素は正規直交基底の微分形式 $\omega$ に対しては $\omega \wedge \star \omega = \text{d} V_{E}$ となります。
ある微分形式との外積が体積形式となるように補完していると考えることができます。
ホッジ作用素の明示式を求めましょう。
その前に補題を示します。
めんどくさくなったので途中省略しました。
気になる方は書籍を見てみてください。
ラグランジアンと作用
ここからは物理学、特に解析力学の文脈に入っていきます。
解析力学ではまず「作用」を定義します。
作用とは物理学の文脈で、運動方程式を導くのに必要な汎関数です。
群の作用とは無関係です。
ここで汎関数とは、関数からスカラーへの写像となるものを指します。
まずはラグランジアンを見てみましょう。
$\mathbb{R}^{D}$ 内の質点の位置を $\boldsymbol{q} (t) = (q^{1}(t), \cdots q^{D}(t))$ で表します。
(普通 $q$ は太字を使わずに書きますがわかりやすくするために太字にします)
ここで $t \in [t_{1},t_{2}]=I \subset \mathbb{R}$ は時間であり、実数のパラメーターです。
各 $q^{i}(t)$ は $C^{\infty}$ 級であり、時間微分可能で $\dot{\boldsymbol{q}}(t) = \dfrac{\text{d}\boldsymbol{q}}{\text{d}t}$ とします。
成分ごとに明示すれば $\dot{\boldsymbol{q}}(t)= \left( \dfrac{\text{d}q^{1}(t)}{\text{d}t}, \cdots, \dfrac{\text{d}q^{D}(t)}{\text{d}t} \right)$ です。
まとめて $(\boldsymbol{q}, \dot{\boldsymbol{q}})$ は $I \rightarrow \mathbb{R}^{2D}$ として $\mathbb{R}^{2D}$ 内の曲線だと考えられます。
この $(\boldsymbol{q}, \dot{\boldsymbol{q}})$ の関数としてラグランジアンを導入します。
ラグランジアン $L$ の定義は色々ありますが、系の運動エネルギーを $T,$ ポテンシャルエネルギーを $V$ として
$L=T-V$
とするのがわかりやすいでしょう。
運動エネルギーは(ニュートン力学の範囲では) $\dfrac{1}{2}m \dot{\boldsymbol{q}}^{2}$ です。
ここで、すべての座標方向の速度を考えて運動エネルギーをスカラーとして計算したい場合は $\dfrac{1}{2}m \lVert \dot{\boldsymbol{q}}^{2} \rVert$ とすればいいでしょう。
今回は成分ごとに計算するのでその必要はありません。
ポテンシャルエネルギーは少し難しいのですが、たとえば重力による位置エネルギー $mg \boldsymbol{q}$ もポテンシャルエネルギーの一種です。
たとえば自由落下する質点の場合、ラグランジアン $L$ は
$$ L(\boldsymbol{q},\dot{\boldsymbol{q}})=\dfrac{1}{2}m \dot{\boldsymbol{q}}^{2}-mg \boldsymbol{q} $$
となります。
書籍にも例が載ってますが、少し難しいので分かる人だけ読んでみてください。
ここで、ラグランジアンに対して作用 $S$ が定まります。
定義はこうです:
$$ S[\boldsymbol{q}, \dot{\boldsymbol{q}}]= \int_{t_{1}}^{t_{2}} L(\boldsymbol{q}(t), \dot{\boldsymbol{q}}(t)) \text{d}t $$
これは $(C^{\infty}(\mathbb{R}))^{2D}$ 上のラグランジアンを実数空間 $\mathbb{R}$ に対応させる写像、つまり汎関数です。
$S : (C^{\infty}(\mathbb{R}))^{2D} \rightarrow \mathbb{R}$ と書かれることもあります。
ところで、この作用の何がすごいのでしょうか?
それは最小作用の原理が成立するからです:
証明しろと言われても、物理学の観測から見つけ出された原理というほかありません。
ですが現代物理学はこの最小作用の原理の上に築き上げられています。
素粒子物理学でもラグランジアンが登場し、作用を定めることによって物体の運動を知ることができるのです。
ですがどうやって作用を最小にする位置と速度の関数を求めたらいいのでしょうか?
それはオイラー・ラグランジュ方程式を使えば求めることができます。
オイラー・ラグランジュ方程式
一般に、作用を最小にする位置と速度の関数を与える必要十分条件を求めることは難しいです。
ですが必要条件ならば求めることができます。
多変数関数の停留点を求めたときのように、停留点を見つけ出せばそこが最小となる可能性があります。
逆に、停留点でなければ最小の地点にはなりえません。
よって作用の停留点を求めることを目標とします。
停留点では勾配 $\nabla$ が $0$ になることから、微分係数が $0$ であると考えられます。
最小の作用を与える位置と速度の関数を $(\boldsymbol{q}, \dot{\boldsymbol{q}})$ としたとき、それを少しだけずらした経路の関数を $(\boldsymbol{q}+\delta \boldsymbol{q}, \dot{\boldsymbol{q}}+\delta \dot{\boldsymbol{q}})$ とします。
ここで境界条件として $\delta \boldsymbol{q}(t_{1})=\delta \boldsymbol{q}(t_{2})=0$ を課します。
$\delta \dot{\boldsymbol{q}}$ は $\delta \boldsymbol{q}$ の時間微分とします。
この $\delta$ という記号は特定のスカラーを表すものではありません。
少しだけずれた経路のことを記号として $\delta \boldsymbol{q}$ や $\delta \dot{\boldsymbol{q}}$ と表しているだけのことです。
微分係数が $0$ ということは、少し経路がずれても作用は変わらないということですね。
もっと厳密に言えば、$\epsilon \rightarrow 0$ として経路のずれが $O (\epsilon)$ のオーダーのとき、一次の項(微分係数)は $0$ で作用のずれのオーダーは $O (\epsilon^{2})$ になるということです。
差分の誤差項は $\epsilon \rightarrow 0$ で無視できるからライプニッツ則が成立します。
詳しくは書籍の説明を見てみてください。
その条件のもと、$f,g$ を関数として $\delta(fg)=\delta f \cdot g + f \cdot \delta g$ が成立します。
停留点での作用を $S$ とすると、求めるべき条件は $\delta S=0$ です。
ここで得られた方程式こそがオイラー・ラグランジュ方程式 (Euler-Lagrange equation) です。
これで系のラグランジアンさえ求められれば位置と速度を決定できることがわかりました。
さっきの自由落下する物体のラグランジアンに当てはめて計算してみましょう。
ラグランジアン $L$ は
$$ L(q^{i}, \dot{q}^{i})=\dfrac{1}{2}m ({\dot{q}}^{i})^{2}-mg q^{i} $$
なので、オイラー・ラグランジュ方程式に代入して
$$ -mg-m \frac{\text{d} \dot{q}^{i}}{\text{d}t}=0. $$
よって $ \dfrac{\text{d} \dot{q}^{i}}{\text{d}t}=-g$ であることがわかります。
これは高校物理でやった運動方程式、$ma=F$ に対応するものですね。
この場合は $a=-g,$ 自由落下の運動方程式の解とまったく同じです。
高校までは運動方程式を立てるのはアイデア勝負でしたが、ラグランジアンを使えば体系的に計算できます。
すごいですね。
さらに詳しいことが知りたくなった人は解析力学を学んでみてください。
スカラー場
ここから先はさらに物理学の深い世界へと入っていきます。
ベクトル束を与え、その切断として場を考えます。
そしてそこからラグランジアンを作ることを目標とします。
まずは最も簡単なスカラー場を考える前に、群の表現について明確な定義を与えましょう。
たとえば $\rho = \text{id},$ つまり恒等写像(何も変化させない写像)も $G$ の表現となりますね。
これを自明な表現といいます。
ここで、変換則が自明な表現であるような場をスカラー場と呼ぶことにします。
つまり、どのような $g \in G$ に対しても $\rho(g) \phi = \phi$ が成立するような場です。
例を見てみましょう。
ベクトル束として自明な直線束 $\mathbb{R}^{4} \times \mathbb{C} \rightarrow \mathbb{R}^{4}$ を考え、そのなめらかな大域的な切断としてスカラー場 $\phi : \mathbb{R}^{4} \rightarrow \mathbb{C}$ を考えます。
つまりは複素数に値を取る $\mathbb{R}^{4}$ 上の関数が $\phi$ です。
実数のラグランジアンを作るため複素共役 $\overline{\phi}$ を導入します。
ここで実数のラグランジアン $L$ を次で定義します:
\begin{eqnarray} L&=& \langle \text{d} \phi, \text{d} \phi \rangle + V(\overline{\phi} \phi) \\ &=& \delta^{\mu \nu} \frac{\partial \overline{\phi}}{\partial x^{\mu}} \frac{\partial \phi}{\partial x^{\nu}}+V(\overline{\phi} \phi) \\ &=& \delta^{\mu\nu} \partial_{\mu} \overline{\phi} \partial_{\nu} \phi+V(\overline{\phi} \phi) \end{eqnarray}
(この箇所は書籍の正誤表で訂正が入れられていました。$V$ の前の符号が正しくは $+$ です)
1行目から2行目への変換は外微分の定義を思い出せば可能です。
2行目から3行目はただ $\dfrac{\partial}{\partial x^{\mu}}= \partial_{\mu}$ と書き直しただけです。
$\delta^{\mu\nu} \partial_{\mu} \overline{\phi} \partial_{\nu} \phi$ は $\partial_{\mu} \overline{\phi} \partial_{\mu} \phi$ とも書かれますが、混同を避けるためアインシュタインの縮約記法に倣います。
また、$V(\overline{\phi} \phi)$ は $\overline{\phi} \phi = | \phi |^{2}$ の実数係数多項式を表しています。
理論によってそれぞれ色々な多項式が与えられると思ってください。
このラグランジアンの作用 $S$ は
$$ S[\phi]=\int _{\mathbb{R}^{4}} \text{d}^{4} x (\delta^{\mu \nu} \partial_{\mu} \overline{\phi} \partial_{\nu} \phi + V(\overline{\phi} \phi)) $$
で与えられますね。
ここで $\text{d}^{4}x = \text{d}x^{1} \cdots \text{d}x^{4}$ を表しています。
この作用をオイラー・ラグランジュ方程式を導いたときのように変分してみましょう。
条件は $\phi'= \phi + \delta \phi$ として $S[\phi']-S[\phi]=0$ です。
ここで境界条件として各々 $x^{\mu}$ について $|x^{\mu}| \rightarrow \infty$ で $\phi(x^{\mu}) \rightarrow 0$ を与えます。
つまり $x^{\mu} \rightarrow \infty$ で $\phi(x^{\mu}) \rightarrow 0,$ かつ $x^{\mu} \rightarrow -\infty$ で $\phi(x^{\mu}) \rightarrow 0$ ということです。
実数空間の両端で $\phi(x^{\mu})=0$ と設定していると思えばわかりやすいでしょう。
$\overline{\phi}$ は固定し変分します。
\begin{eqnarray} S[\phi']-S[\phi] &=& \int _{\mathbb{R}^{4}} \text{d}^{4} x (\delta^{\mu \nu} \partial_{\mu} \overline{\phi} \partial_{\nu} (\phi+\delta \phi) + V(\overline{\phi} (\phi+\delta \phi))-(\delta^{\mu \nu} \partial_{\mu} \overline{\phi} \partial_{\nu} \phi + V(\overline{\phi} \phi))) \\ &=& \int _{\mathbb{R}^{4}} \text{d}^{4} x (\delta^{\mu \nu} \partial_{\mu} \overline{\phi} \partial_{\nu} \delta \phi + V(\overline{\phi} (\phi+\delta \phi))-V(\overline{\phi} \phi)) \end{eqnarray}
ここで $\epsilon \rightarrow 0$ での一次近似 $f(x+\epsilon)=f(x)+f'(x) \epsilon +O (\epsilon^{2})$ を使い、$\overline{\phi}$ を定数、$\phi$ を変数と思って微分すると
\begin{eqnarray} &=& \int _{\mathbb{R}^{4}} \text{d}^{4} x (\delta^{\mu \nu} \partial_{\mu} \overline{\phi} \partial_{\nu} \delta \phi + V'(\overline{\phi} \phi) \overline{\phi} \delta \phi + O ( (\delta \phi)^{2})) \end{eqnarray}
さらに $\partial _{\nu} \delta \phi$ の部分で部分積分して
\begin{eqnarray} &=& \int _{\mathbb{R}^{4}} \text{d}^{4} x ( ( -\delta^{\mu \nu} \partial_{\mu}\partial_{\nu} \overline{\phi} + V'(\overline{\phi} \phi) \overline{\phi}) \delta \phi + O ( (\delta \phi)^{2} ) ). \end{eqnarray}
したがって運動方程式 $\delta^{\mu \nu} \partial_{\mu}\partial_{\nu} \overline{\phi}-V'(\overline{\phi} \phi) \overline{\phi}=0$ と、$\phi \rightarrow \overline{\phi}$ とした共役な運動方程式
$\delta^{\mu \nu} \partial_{\mu}\partial_{\nu} \phi-V'(\overline{\phi}\phi)\phi=0$ も得られます。
ここでシンプルな $V=0$ の場合、運動方程式は $\delta^{\mu \nu} \partial _{\mu} \partial _{\nu} \phi= \Delta \phi=0$ となります。
$\Delta := \delta^{\mu \nu} \partial _{\mu} \partial _{\nu}$ はラプラシアンと呼ばれる作用素です。
この方程式はラプラス方程式と呼ばれ、調和関数が解となります。
調和関数とは $\Delta f=0$ を満たす関数 $f$ のことです。
つまり、この場合ユークリッド計量 $\delta^{\mu \nu}$ に対応して調和関数が現れたと考えることができます。
もうひとつ違う計量で考えてみましょう。
ミンコフスキー計量を $(g^{\mu \nu}) = \text{diag}( -1,1,1,1)$ で与えます。
$\text{diag}( -1,1,1,1)$ とは行列の対角成分が左斜めから順に $( -1,1,1,1)$ であり、それ以外はすべて $0$ であるような行列です。
ミンコフスキー計量の逆行列もまたミンコフスキー計量なので、$g^{\mu \nu}=g_{\mu \nu}$ という書かれ方をします。
ここで、ミンコフスキー計量の文脈では添字は $0$ から始まり $x^{\mu}=x^{0},x^{1},x^{2},x^{3}$ とされることが多いです。
時間軸と空間軸を分け、$(x^{0},x^{1},x^{2},x^{3})=(t,x,y,z)$ とするみたいですね。
相対性理論の文脈ではこっちの記法のほうが便利なので使います。
文脈で判断してください。
さて、この場合の運動方程式は $g^{\mu \nu} \partial _{\mu} \partial _{\nu} \phi=0$ となりますね。
ここで $y,z$ に依存しない解を求めてみましょう。
その時方程式は
$$ \frac{\partial^{2} \phi}{\partial t^{2}}=\frac{\partial^{2} \phi}{\partial x^{2}} $$
という波動方程式になります。
移項して偏微分作用素を因数分解すると
$$ \left( \frac{\partial}{\partial t} - \frac{\partial}{\partial x} \right) \left( \frac{\partial}{\partial t} + \frac{\partial}{\partial x} \right) \phi(t,x)=0 $$
となり、滑らかな1変数関数 $f(x),g(x)$ で $\phi(t,x)$ は $f(x-t)$ または $g(x+t)$ のように表されることが分かります。
この解は粒子がただただ真っすぐ飛んでいく様子を表しています。
この場の理論は自由粒子を表す、とも言われるみたいですね。
このように、スカラー場に対応した粒子が存在して物理法則を記述しているのです。
複素共役で不変な物理法則には巡回群 $\mathbb{Z}_{2}$ が対称性を記述していると思うこともできますが、ここで複素共役をエルミート共役に変えてみましょう。
この場合はユニタリ群 $U(n)$ が対応し、対称性を記述することになります。
ゲージ場の作用
ここからは共変微分のときに導入したゲージ場が活躍します。
$G$ をリー群とし、ここではゲージ群と呼びます。
$\mathfrak{g}$ は $G$ に対応するリー代数であり、$T_{i} \in \mathfrak{g}$ を $\mathfrak{g}$ の生成子(基底)とします$(1 \leq i \leq \text{dim} G).$
ここでゲージ場はリー代数に値を取る $1$-形式、つまり $A=A_{\mu} \text{d}x^{\mu} \in \mathfrak{g} \otimes \Omega^{1}(\mathbb{R}^{D})$ です。
ゲージ場もまた生成子で展開でき、$A_{\mu}=A^{i}_{\mu}T_{i}$ です。
ユニタリ群 $U(n)$ をとりそのリー代数を $\mathfrak{u}(n)$ とすると、任意の $A_{\mu} \in \mathfrak{u}(n)$ に対して $A_{\mu}^{\dagger}=-A_{\mu}$ が成立します。
$f: \mathbb{R}^{D} \rightarrow U(n)$ を滑らかな関数とすると、$A_{\mu}$ のゲージ変換は
$A_{\mu} \mapsto f \partial_{\mu} f^{-1}+f A_{\mu} f^{-1}$
で定められます。
式変形でたびたび $[T_{i},T_{j}]$ が登場しますが、リー代数はリー括弧積で閉じていることからこれも再び生成子で展開でき、$[T_{i},T_{j}]=f^{k}_{ij}T_{k}$ とできます。
この係数となる $f^{k}_{ij}$ は構造定数と呼ばれ、物理学で重要となる定数です。
ゲージ場のとき登場した曲率も同様に生成子で展開できます。
書籍で $\mathfrak{su}(2)$ の生成子の例が出ていますが、線形空間の基底と同じく一般に生成子の取り方は一意ではないです。
キリング形式については後で解説するとしましょう。
ここで、ファイバー束 $E \rightarrow M$ をファイバーが $\mathbb{C}^{n}$ で群 $U(n)$ が作用するベクトル束とし、$U(n)$ の行列表現として $n \times n$ のユニタリ行列を考えます。
複素スカラー場 $\phi \in \Gamma(E)$ を $E$ の切断とし、点 $x \in \mathbb{R}^{D}$ で $\phi(x)$ は複素 $n$ 行縦ベクトルとします。
滑らかな写像 $f: \mathbb{R}^{D} \rightarrow U(n), \, x \mapsto f(x) \in U(n)$ を導入しましょう。
ここで点 $x \in M = \mathbb{R}^{D}$ における $\phi$ に対するゲージ変換を
$\phi(x) \mapsto \phi'(x)=f(x) \phi(x), \, \phi^{\dagger}(x) \mapsto \phi^{{\dagger}'}(x)=\phi^{\dagger}f^{-1}(x)$
で定めます。
$f(x)=\lbrace f_{ij}(x) \rbrace_{1 \leq i,j \leq n}$ は行列であり、右から列ベクトルがかかっていることに注意してください。
$f(x)$ が定数行列のとき、$\delta^{\mu \nu}\partial_{\mu}\phi^{\dagger}(x) \partial_{\nu} \phi(x)= \langle \text{d} \phi, \text{d} \phi \rangle$ への作用は不変になります。
いまは $\partial_{\mu}f(x)$ が $0$ になるとは限らないことに注意すると、
\begin{eqnarray} \delta^{\mu \nu} \partial_{\mu} \phi^{{\dagger}'}(x) \partial_{\nu} \phi'(x) &=& \delta^{\mu \nu} \partial_{\mu} (\phi^{\dagger}(x)f^{-1}(x))\partial_{\nu}(f(x) \phi(x)) \\ &=& \delta^{\mu \nu} (\partial_{\mu}\phi^{\dagger}(x) \cdot f^{-1}(x)+\phi^{\dagger}(x) \cdot \partial_{\mu} f^{-1}(x))(\partial_{\nu} f(x) \cdot \phi(x) + f(x) \cdot \partial_{\nu} \phi(x)) \\ &=& \delta^{\mu \nu} \partial_{\mu} \phi^{\dagger}(x) \partial_{\nu} \phi(x) + \cdots \\ &\ne& \delta^{\mu \nu} \partial_{\mu} \phi^{\dagger}(x) \partial_{\nu} \phi(x) \end{eqnarray}
となり、邪魔な項が出現するせいで群の作用に対して変換が準同型になりません。
そこで共変微分を使う必要が出てきます。
切断 $\phi$ に対する共変微分は $D_{\mu}\phi=(\partial_{\mu}+A_{\mu})\phi$ で定まり、そのエルミート共役を $\overline{D}\phi^{\dagger}:=(D \phi)^{\dagger}$ とすると、反エルミート性より $(A_{\mu}\phi)^{\dagger}=\phi^{\dagger}{A_{\mu}}^{\dagger}=-\phi^{\dagger}A_{\mu}$ です。
よって、
$\overline{D}_{\mu} \phi^{\dagger}= \partial_{\mu} \phi^{\dagger}-\phi^{\dagger} A_{\mu}$
と書くことができます。
実際、$A_{\mu} \mapsto A'_{\mu}=f \partial_{\mu} f^{-1}+f A_{\mu} f^{-1}$ で
\begin{eqnarray} (D_{\mu}\phi)'&=& (\partial_{\mu}+A'_{\mu})\phi' \\ &=& (\partial_{\mu}+f \partial_{\mu} f^{-1}+f A_{\mu} f^{-1})f \phi \\ &=& \partial_{\mu}(f \phi) +f (\partial_{\mu} f^{-1}) \cdot f\phi + f A_{\mu} \phi \\ &=& (\partial_{\mu} f) \phi + f \partial_{\mu}\phi+f \partial_{\mu}(f^{-1} \cdot f) \phi - (\partial_{\mu}f) \phi + f A_{\mu} \phi \\ &=& f D_{\mu} \phi. \end{eqnarray}
同様に $(\overline{D}_{\mu} \phi^{\dagger})'=(\overline{D}_{\mu} \phi^{\dagger})f^{-1}$ です。
それゆえ $\langle D \phi, D \phi \rangle = \delta^{\mu \nu} \overline{D}_{\mu} \phi^{\dagger} D_{\nu} \phi$ はゲージ変換で不変です。
よってここからゲージ不変な作用を作ることができます。
詳しくは書籍を見てみてください。
今やったようなゲージ変換の仕方を基本表現 (fundamental representation) と言ったりもします。
もうひとつ、随伴表現というものも見てみましょう。
切断 $\phi$ のゲージ変換を $\phi(x) \mapsto \phi'(x)=f(x) \phi(x) f^{-1}(x)$ で定めます。
このような変換の仕方を随伴表現 (adjoint representation) と言います。
この変換に対して準同型性を保つ共変微分は
$D_{\mu} \phi = \partial _{\mu} \phi + [A_{\mu}, \phi]$
で与えられます。実際、
\begin{eqnarray} (D_{\mu} \phi)'&=& \partial_{\mu} \phi'+[A'_{\mu}, \phi'] \\ &=& \partial_{\mu} (f \phi f^{-1})+[f \partial_{\mu} f^{-1}+ f A_{\mu} f^{-1}, f \phi f^{-1}] \\ &=& \partial_{\mu} f \cdot \phi f^{-1}+f(\partial_{\mu} \phi) f^{-1}+ f \phi \cdot \partial_{\mu} f^{-1}+f(\partial_{\mu} f^{-1})f \phi f^{-1}+f A_{\mu} \phi f^{-1}-f \phi \cdot \partial_{\mu} f^{-1}-f \phi A_{\mu} f^{-1} \\ &=&f(\partial_{\mu} \phi) f^{-1}+f A_{\mu} \phi f^{-1}-f \phi A_{\mu} f^{-1} \\ &=&f(\partial_{\mu} \phi +[A_{\mu}, \phi])f^{-1} \\ &=& f(D_{\mu} \phi) f^{-1}. \end{eqnarray}
ここからまたゲージ不変性を持った作用を作ることもできます。
ヒッグス場が関わるらしいのですが、難しいので書籍などを参考にしてください。
ヤン-ミルズ作用
ここからゲージ変換 $A_{\mu} \mapsto f \partial_{\mu} f^{-1} + f A_{\mu} f^{-1}$ で不変となる作用を作っていこうと思います。
ですがこのゲージ変換は基本表現でも随伴表現でもなく、考えるのが難しそうです。
そこでゲージ場の曲率 $F= \text{d} A+ A \wedge A$ のゲージ変換を考えていこうと思います。
曲率 $2$-形式は随伴表現で変換されることがわかったので、簡単にゲージ不変量を作ることができます。
ここではヤン-ミルズ作用を導入します。
正直キリング形式がなんなのかはよくわかりませんでしたが、次の性質が成り立つらしいです:
(i) 対称性
$\text{tr}\langle x,y \rangle=\text{tr}\langle y,x \rangle$
(ii) (双)線形性
$\text{tr}\langle ax+by,z \rangle=a \text{tr}\langle x,z \rangle + b \text{tr} \langle y, z \rangle$
ここで、$\text{tr}()$ は行列の跡として解釈されるみたいです。
ヤン-ミルズ作用の定義にゲージ結合定数 $g$ を用いて係数 $\dfrac{1}{4g^{2}}$ がつく場合もあるみたいですが、よくわかりませんでした。
とりあえず書籍のまま計算を進めていきます。
(この証明の途中に正誤表で訂正が入れられていました。正誤表を確認してください)
これで曲率のゲージ変換に対し不変となるような作用が定義されました。
次はこの作用を変分して運動方程式を導出します。
方法はさっきと全く同じで、$A'_{\mu}=A_{\mu}+\delta A_{\mu}$ と設定し $S_{\text{YM}}[A']-S_{\text{YM}}[A]=\delta S =0$ を条件とします。
もちろん、$\delta$ は特定のスカラーではなく $\delta A_{\mu}$ で微小にずれた値を表しているだけのことです。
積分範囲が $\mathbb{R}^{D}$ であることから、境界条件は $| x^{\mu} | \rightarrow \infty$ で $\delta A_{\mu} \rightarrow 0$ とします。
それゆえ(すぐ後に解説するので式変形だけ見てください)、
\begin{eqnarray} \delta S&=& -2 \int_{\mathbb{R}^{D}} \text{d}^{D}x \text{tr}(\delta F_{\mu \tau} \cdot F_{\nu \rho} \delta^{\mu \nu} \delta^{\tau \rho}) \\ &=& -2 \int_{\mathbb{R}^{D}} \text{d}^{D}x \text{tr}((\partial_{\mu}\delta A_{\tau}-\partial_{\tau}\delta A_{\mu}+[\delta A_{\mu}, A_{\tau}]+[A_{\mu}, \delta A_{\tau}]) F_{\nu \rho} \delta^{\mu \nu} \delta^{\tau \rho}) \\ &=& 2 \int_{\mathbb{R}^{D}} \text{d}^{D}x \text{tr}(\delta A_{\tau}\partial^{\nu} F_{\nu \rho} \cdot \delta^{\tau \rho} - \delta A_{\mu} \partial^{\rho} F_{\nu \rho} \cdot \delta^{\mu \nu}-[\delta A_{\mu}, A_{\tau}] F_{\nu \rho} \delta^{\mu \nu} \delta^{\tau \rho} - [A_{\mu}, \delta A_{\tau}] F_{\nu \rho} \delta^{\mu \nu} \delta^{\tau \rho}) \\ &=& 2 \int_{\mathbb{R}^{D}} \text{d}^{D}x \text{tr}(\delta A_{\tau}\partial^{\nu} F_{\nu \rho} \cdot \delta^{\tau \rho} - \delta A_{\mu} \partial^{\rho} F_{\nu \rho} \cdot \delta^{\mu \nu}-\delta A_{\mu}[A_{\tau},F_{\nu \rho}] \delta^{\mu \nu} \delta^{\tau \rho} + \delta A_{\tau}[A_{\mu},F_{\nu \rho}]\delta^{\mu \nu} \delta^{\tau \rho}) \\ &=& 2 \int_{\mathbb{R}^{D}} \text{d}^{D}x \text{tr}(\delta A^{\rho}\partial^{\nu} F_{\nu \rho} - \delta A^{\nu} \partial^{\rho} F_{\nu \rho}-\delta A^{\nu}[A^{\rho},F_{\nu \rho}] + \delta A^{\rho}[A^{\nu},F_{\nu \rho}]) \\ &=& 4\int_{\mathbb{R}^{D}} \text{d}^{D}x \text{tr}(\delta A^{\rho}\partial^{\nu} F_{\nu \rho} -\delta A^{\nu}[A^{\rho},F_{\nu \rho}]) \\ &=& 4 \int_{\mathbb{R}^{D}} \text{d}^{D}x \text{tr}(\delta A^{\mu}(\partial^{\nu} F_{\nu \mu}-[A^{\nu},F_{\mu \nu}]) ). \end{eqnarray}
ここで、最初の等式は跡の巡回対称性とライプニッツ則より
\begin{eqnarray} \delta \text{tr}(F_{\mu \nu} F_{\nu \rho} \delta^{\mu \nu} \delta^{\tau \rho})&=& \text{tr}(\delta F_{\mu \tau} \cdot F_{\nu \rho} \delta^{\mu \nu} \delta^{\tau \rho}+F_{\mu \tau} \cdot \delta F_{\nu \rho} \cdot \delta^{\mu \nu} \delta^{\tau \rho}) \\ &=& \text{tr}(\delta F_{\mu \tau} \cdot F_{\nu \rho} \delta^{\mu \nu} \delta^{\tau \rho}+ F_{\nu \rho} \cdot \delta F_{\mu \tau} \cdot \delta^{\nu \mu} \delta^{\rho \tau}) \\ &=& 2\text{tr}(\delta F_{\mu \tau} \cdot F_{\nu \rho} \delta^{\mu \nu} \delta^{\tau \rho}). \\ \end{eqnarray}
$\mu, \nu, \tau, \rho$ は和の範囲が等しいダミー添字(媒介変数)でありいつでも交換できます。
この箇所も正誤表を確認してください。
2番目の等式は $\delta$ のライプニッツ則をリー括弧積に適用しました。具体的には、
\begin{eqnarray} \delta [A_{\mu},A_{\tau}] &=& \delta(A_{\mu}A_{\tau}-A_{\tau}A_{\mu}) \\ &=& \delta A_{\mu} A_{\tau}+A_{\mu} \delta A_{\tau} - \delta A_{\tau} A_{\mu} - A_{\tau} \delta A_{\mu} \\ &=& [\delta A_{\mu}, A_{\tau}]+[A_{\mu},\delta A_{\tau}]. \end{eqnarray}
また、3番目の等式では部分積分と境界条件を使いました。
クロネッカーのデルタの性質により添字を1つ消すことができ
$$ \partial_{\mu}F_{\nu \rho} \delta^{\mu \nu} \delta^{\tau \rho} = \partial^{\nu} F_{\nu \rho} \cdot \delta^{\tau \rho} $$
とできます。$\partial^{\nu}=\partial_{\nu}$ で、縮約記法のために添え字を上げたに過ぎません。
(厳密に言えば、今はユークリッド計量なので添字を上げ下げしても変わりません)
また、4番目の等式ではリー括弧積と跡の性質を使いました。
具体的には $\text{tr}([A,B]C)=\text{tr}(A[B,C])$ です。
これを利用して式変形しました。
あとはダミー添字を入れ替え、$F_{\mu \nu}=-F_{\nu \mu}$ を利用しただけです。
ここで次の式が得られました:
$$ \delta S=4 \int_{\mathbb{R}^{D}} \text{d}^{D}x \text{tr}(\delta A^{\mu}(\partial^{\nu} F_{\nu \mu}-[A^{\nu},F_{\mu \nu}]) ). $$
$\delta A^{\mu}$ は任意に取れるゆえ、$\delta S=0$ となるための条件は次で与えられます:
$$ \partial^{\nu} F_{\mu \nu} +[A^{\nu}, F_{\mu \nu}]=0. $$
これこそがヤン-ミルズ方程式 (Yang-Mills equation) です。
随伴表現の共変微分を $D^{\nu}=\partial^{\nu}+[A^{\nu},]$ とすれば、ヤン-ミルズ方程式は
$$ D^{\nu}F_{\mu \nu}=0. $$
とも書けます。
このヤン-ミルズ方程式が素粒子物理学の基盤になっているそうです。
マクスウェル理論
いよいよこの書籍の一つの目標、電磁場におけるマクスウェルの方程式を数学的に導くことができます。
早速やってみましょう。
計量としてユークリッド計量 $\text{diag}(1,1,1,1)$ の代わりにミンコフスキー計量 $\text{diag}( -1,1,1,1)$ を考えます。
座標は時間と空間に分け、$(t,x,y,z)=(x^{0},x^{1},x^{2},x^{3})$ とします。
また、ゲージ群として $U(1)$ を考えます。
つまりは絶対値が$1$の複素数の集合です。
この場合のヤン-ミルズ作用がマクスウェルの方程式を与えることを見ていきましょう。
$U(1)=\lbrace e^{i \theta} \, | \, \theta \in \mathbb{R} \rbrace$ は通常の複素数の積について群をなし、可換群となります。
そのリー代数 $\mathfrak{u}(1)$ は純虚数の集合、つまり $\mathfrak{u}(1)= \lbrace i \theta \, | \, \theta \in \mathbb{R} \rbrace$ です。
つまり $\mathfrak{u}(1)$ に値を取るゲージ場 $A$ に対して $A \wedge A=0$ であり、任意の $A_{\mu}, A_{\nu}$ に対して $[A_{\mu}, A_{\nu}]=0$ となります。
この場合曲率が簡単になり、$F= \text{d}A, \, F_{\mu \nu}=\partial_{\mu} A_{\nu}-\partial_{\nu} A_{\mu}$ と書けます。
可換群であるからゲージ変換も簡単になり、$A \mapsto A'=A+f \text{d} f^{-1}$ となります。
ここで基本表現の複素スカラー場( $\mathbb{R}^{4}$ 上の複素関数 $\phi$ とその複素共役 $\overline{\phi}$ )も考えると、そのゲージ変換は
$$ \phi \mapsto f \phi, \, \overline{\phi} \mapsto \phi \overline{f} $$
です。ここで基本表現に対する共変微分を使い、$\langle D \phi, D \phi \rangle = \overline{D}_{\mu} \overline{\phi} D_{\nu} \phi g^{\mu \nu}$ がゲージ変換で不変だったことを思い出してください。
ヤン-ミルズ作用と基本表現による作用の和を取れば、
$$ S_{\text{Maxwell}}=\int_{\mathbb{R}^{4}} \text{d}^{4}x \left( -\frac{1}{4}F_{\mu \tau}F_{\nu \rho} g^{\mu \nu} g^{\tau \rho} - \overline{D}_{\mu} \overline{\phi} D_{\nu} \phi g^{\mu \nu} \right) $$
が $U(1)$ のゲージ変換で不変な作用になります。
第二項はミンコフスキー計量のために符号を反転させています。
ここで、今は $1 \times 1$ 行列を考えているので $\text{tr}A=A$ となります。
$\dfrac{1}{4}$ は都合上つけただけのただの係数です。
第一項はヤン-ミルズ方程式の $U(1)$ の場合に帰着されます。
$U(1)$ の場合 $\phi^{\dagger}=\overline{\phi}$ に注意して、第二項は展開すると
$$ \overline{D}_{\mu} \overline{\phi} D_{\nu} \phi g^{\mu \nu}=(\partial_{\mu}\overline{\phi}-\overline{\phi} A_{\mu})(\partial_{\nu}\phi+A_{\nu}\phi)g^{\mu \nu} $$
なので $A$ で変分すると、定数項($A$ に関係ない項)は消えて
\begin{eqnarray} \delta((\overline{D}_{\mu} \overline{\phi} D_{\nu} \phi)g^{\mu \nu}) &=& ((\delta \overline{D}_{\mu} \overline{\phi})D_{\nu} \phi + \overline{D}_{\mu} \overline{\phi}(\delta D_{\nu} \phi) )g^{\mu \nu} \\ &=& ( - \overline{\phi} \delta A_{\mu})(D_{\nu}\phi) g^{\mu \nu}+\overline{D}_{\mu} \overline{\phi} (\delta A_{\nu} \cdot \phi)g^{\mu \nu} \\ &=& -\delta A^{\mu} (\overline{\phi} D_{\mu} \phi -\overline{D}_{\mu} \overline{\phi} \cdot \phi) \end{eqnarray}
が得られます。よって $A$ の変分で得られる運動方程式は
$$ \partial^{\nu} F_{\nu \mu} + \overline{\phi} D_{\mu} \phi - \overline{D}_{\mu} \overline{\phi} \cdot \phi =0. $$
ここで $J_{\mu} := -\overline{\phi} D_{\mu} \phi + \overline{D}_{\mu} \overline{\phi} \cdot \phi$ とおくと、
$$ \partial^{\nu} F_{\nu \mu}=J_{\mu} $$
と書くことができます。
このベクトルは $J=\left ( -\rho, j_{1}, j_{2}, j_{3} \right)$ に対応付けられ、$\rho$ は電荷、$j_{k}$ は $x^{k}$ 方向の電流を表します。
(厳密には $\rho$ は電荷密度、$j$ は電流密度を表しますがこの文脈では単位の扱いは適当です)
次に、曲率に対して電場 $\boldsymbol{E}=(E_{1},E_{2},E_{3})$ と磁場 $\boldsymbol{B}=(B_{1},B_{2},B_{3})$ を導入して
\begin{eqnarray} (F_{\mu \nu}) &=& (\partial_{\mu}A_{\nu}-\partial_{\nu}A_{\mu}) \\ &=& \begin{pmatrix} 0 & E_{1} & E_{2} & E_{3} \\ -E_{1} & 0 & -B_{3} & B_{2} \\ -E_{2} & B_{3} & 0 & -B_{1} \\ -E_{3} & -B_{2} & B_{1} & 0 \end{pmatrix} \end{eqnarray}
で定めます。
今、$\partial^{\nu} F_{\nu \mu}=J_{\mu}$ より $\partial^{\nu} F_{\nu 0}=-\rho$ です。
よって(1)と組み合わせて $\nabla \cdot \boldsymbol{E}=\rho$ が言えます。
現在の単位系に直すと $\nabla \cdot \boldsymbol{E} = \dfrac{\rho}{\epsilon_{0}}$ です。
$\epsilon_{0}$ は真空の誘電率です。
これがマクスウェルの方程式の1つ目、電場におけるガウスの法則です。
また、$i=1,2,3$ のときの成分を組み合わせると $\boldsymbol{J}=-\dfrac{\partial \boldsymbol{E}}{\partial t}+ \nabla \times \boldsymbol{B}$ が得られます。
これも現在の単位系に直すと $\nabla \times \boldsymbol{B}=\mu_{0} \left( \boldsymbol{J}+\epsilon_{0}\dfrac{\partial \boldsymbol{E}}{\partial t} \right)$ です。
$\mu_{0}$ は真空の透磁率です。
これがマクスウェルの方程式の4つ目、アンペールの法則です。
2つ目と3つ目はどうやって導くのかというと、曲率に対するビアンキの方程式を使います。
これでマクスウェルの方程式4本が導かれました。
まとめると、
(i) $\nabla \cdot \boldsymbol{E} = \dfrac{\rho}{\epsilon_{0}}$
(ii) $\nabla \cdot \boldsymbol{B}=0$
(iii) $\nabla \times \boldsymbol{E}=-\dfrac{\partial \boldsymbol{B}}{\partial t}$
(iv) $\nabla \times \boldsymbol{B}=\mu_{0} \left( \boldsymbol{J}+\epsilon_{0}\dfrac{\partial \boldsymbol{E}}{\partial t} \right)$
です。
それぞれ何を表しているか簡単に説明しましょう。
(i)電場のガウスの法則
これはある点電荷から電場が湧き出す様子を表しています。
(ii)磁場のガウスの法則
これは磁場の湧き出しは常に $0,$つまり点磁荷(モノポール)は存在しないまたは簡単に作れないことを表しています。
モノポールが存在するかどうかは未だに研究が行われていて、非常に高いエネルギーがあればモノポールを作ることができるとする理論もあります。
ですが少なくともマクスウェル方程式の立場からはモノポールは存在しないとするのが妥当です。
(iii)ファラデーの法則
これは電磁誘導を表しています。
高校物理ではコイルの電圧を $V,$ コイルを貫く磁束を $\Phi$ としたとき $V=-\dfrac{\partial \Phi}{\partial t}$ で表されました。
ここでは微小な面積を考え、磁束 $\Phi$ の代わりに 磁束密度 $\boldsymbol{B}$ を使っています。
高校物理ではマイナス符号の意味が分かりづらかったですが、ここでは外積を使いベクトルとして明示されたおかげでマイナス符号の意味が明確になりました。
(iv)アンペールの法則
これは右ねじの法則とも言われています。
電流が流れているとき、必ずその周りに磁場が発生していることを表しています。
この式は微小な線素での関係を表しているので、実際に磁場を求める場合は積分する必要があります。
ビオ・サバールの法則もこのアンペールの法則から導かれます。
このように、ゲージ理論から日常の物理現象を説明することが可能になりました。
今の場合はゲージ群が $U(1)$ でしたが、これをもっと大きな群に拡大して対称性を探すのが現在のゲージ理論の大きなトレンドです。
詳しいことが知りたくなったら素粒子物理学の本などを読んでみてください。
ここから先はヤン-ミルズ方程式の解に続いていきますが、私には難しかったので書籍を読んでください。
第7章ではリーマン幾何を扱います。
微分幾何入門(森北出版)の解説 <第5章 -主束->
この記事の続きです。
mitsuki-science.hatenablog.com
まだ読まれていない方は先にどうぞ。
この記事では主束を取り扱います。
なお、この記事は私の勉強不足により解説が雑です。
書籍や他の文献を中心に学習されることをおすすめします。
*この記事は「微分幾何入門(森北出版)」の解説です。この記事の内容だけでは完全な学習になりません。必ず書籍を手元において学習を進めてください。
主束
ここから先は主束について学んでいきます。
主束とはベクトル束と対になる概念で、線形空間とその双対空間のようなものです。
とりあえず厳密な定義を見てみましょう。
その前に、作用が単純推移的であるというのはこういう意味です。
それでは主束の厳密な定義を紹介します。
これだけ見たら意味不明なので、ベクトル束から構成される主束、特にフレーム束が現れる様子を見ていきましょう。
$E \xrightarrow{\pi} M$ を階数 $r$ のベクトル束とします。
$p \in M$ 上のファイバーは $\mathbb{R}^{r}$ であり、それに作用する行列つまり線形写像が存在します。
その線形写像としてリー群 $\text{GL}_{r}(\mathbb{R})$ がとれますね。
このリー群 $\text{GL}_{r}(\mathbb{R})$ を新しくファイバーと見なせば、$(E, \pi, M, \text{GL}_{r}(\mathbb{R}))$ もまたファイバー束となります。
$y \in F_{p}$ に対して行列 $g \in \text{GL}_{r}(\mathbb{R})$ を右から掛ける作用を $y \cdot g$ とすれば、上の主束のすべての条件を満たします。
ベクトル束から構成される主束を特にフレーム束といいます。
上の主束の定義はフレーム束を一般化したものです。
階数 $r$ のベクトル束に対しファイバーを $\text{GL}_{r}(\mathbb{R})$ と取ることにより主束を構成することができるのです。
厳密には群の表現を使って構成することができるらしいのですが、私の勉強不足により説明することができません。
必要な場合にまた戻って説明しましょう。
本では色々な主束の例が説明されていますが、ここからは特に接フレーム束を見ていきます。
接フレーム束
ここから $M$ を $m$ 次元可微分多様体とします。
ベクトル束として接ベクトル束 $TM$ を取ると、接フレーム束 (tangent frame bundle) というものが現れます。
(単にフレーム束という場合も多いです)
ここでまずは厳密な定義と、そのモチベーションを見ていきましょう。
$TM$ に対応する接フレーム束の定義はこうです:
色々あって難しそうですが、簡単に言うと $T_{p}M$ から $m$ 個基底になる組を取ってきて全て集めただけです。
なお、今回基底の順序は考慮されるのでたとえば $(e_{1}, \cdots, e_{m})$ と $(e_{m}, \cdots, e_{1})$ は別物で両方 $FM$ の元であるとします。
標構といえば順序付けられた基底のことを指します。
$U$ を $M$ の開集合のひとつとすると、$FM$ は局所的に $U \times \text{GL}_{m}(\mathbb{R})$ と微分同相になります。
接フレーム束のファイバーとして $\text{GL}_{m}(\mathbb{R})$ が取れ、局所自明化より局所的な微分同相の関係が成り立つからです。
細かい話はまた後で戻ってやるとして、これで主束上の接続を定義できます。
主束上の接続
書籍ではエーレスマン接続と紹介されていましたが、エーレスマン接続はファイバー束上の一般的な接続を指す場合が多いみたいなので混乱を避けるために主束上の接続とします。
まず、主束 $P$ は局所的には底空間 $M$ の近傍 $U$ とリー群 $G$ の直積 $U \times G$ と微分同相ですね。
ここで $p \in P$ を取り、接空間 $T_{p}P$ を考えます。
$P$ 自体も多様体なので接空間が定義できます。
ここで、接空間 $T_{p}P$ を "$U$ 方向" と "$G$ 方向" に分けることを考えてみましょう。
$T_{p}P$ は線形空間で、次元に関して $\text{dim}(T_{p}P)=\text{dim}(M)+\text{dim}(G)$ が成立することがわかります。
この線形空間 $T_{p}P$ を直和分解することを考えます。
線形空間の直和分解の定義を見てみましょう。
定義より、直和分解の要素となる部分空間の順序は結果に影響しません。
$V_{1} \oplus \cdots \oplus V_{k}$ も $V_{k} \oplus \cdots \oplus V_{1}$ も同じです。
テンソルの $\otimes$ と記号が似ているので混同しないように注意してください。
さて、ここからは主束上の接続を紹介していきます。
私の勉強不足により、定理の証明や定義の意味について紹介することができません。
書籍や他の文献を読んでみてください。
というわけでさっそくいきましょう。
主束には構造群としてリー群 $G$ が備わっています。
特殊ユニタリ群 $\text{SU}(2)$ の例で見たように、リー群には必ず対応するリー代数があります。
$G$ に対応するリー代数を $\mathfrak{g}$ としましょう。
リー代数の元 $A \in \mathfrak{g}$ は指数関数により $\exp (tA) \in G$ となり、リー代数とリー群を結ぶ架け橋のような役割をします。
ここで、$t$ は実数のパラメーターです。
$g \in G$ を取って $R_{g}$ で $g$ による右作用を表せば、主束上の点 $p$ に対して
$R_{\exp (tA)} p = p \exp (tA)$
となりますね。
$\exp tA$ もまた行列となるからです。
ここで $t=0$ のとき、$R_{\exp (tA)} p = p$ となります。
さて、$p \in P$ で
$$ A^{\sharp}(p) := \left. \frac{\text{d}}{\text{d}t} (p \exp (tA)) \right |_{t=0} $$
と定義します。
$\underline{A} _{p} := \left. \dfrac{\text{d}}{\text{d}t} (p \exp (tA)) \right |_{t=0}$ と書いて基本ベクトル場と呼んだりもします。
他にも基本ベクトル場の表記は様々あるのでその都度文献でチェックしてください。
ここで、いきなりですが "$G$ 方向" の部分空間となる線形空間として垂直部分空間 $\mathcal{V}_{p}P$
$$ \mathcal{V}_{p}P := \lbrace A^{\sharp} | A \in \mathfrak{g} \rbrace $$
を定義し、その補空間として "$U$ 方向" の水平部分空間 $\mathcal{H}_{p}P,$ つまり
$$ T_{p} P = \mathcal{H}_{p}P \oplus \mathcal{V}_{p}P $$
として導入します。
($U$ を有限次元の線形空間、$V$ を $U$ の部分空間とすると、ある線形空間 $W$ が存在して必ず $U=V \oplus W$ が成り立つ)
(ここまで見たらもはや意味不明の領域ですががんばってください)
まず次の定理が成立します:
証明は理解できなかったので省略させてください。
これで主束上の接続を定義できます。
残念ながら今の私には理解できませんでした。
ですがこれを使えばゲージ理論に応用できるらしいです。
今回はゲージ理論と一般相対性理論への応用が目標なので、主束の詳しい説明が知りたい人は他の文献を参考にしてください。
微分幾何入門(森北出版)の解説 <第4章 -ファイバー束->
この記事の続きです。
mitsuki-science.hatenablog.com
まだ読まれていない方は先に読んでください。
この記事ではファイバー束を取り扱います。
*この記事は「微分幾何入門(森北出版)」の解説です。この記事の内容だけでは完全な学習になりません。必ず書籍を手元において学習を進めてください。
ファイバー束のアイデア
これからファイバー束を定義していきます。
簡単に言えば、複雑な多様体を直積の形で分解して調べやすくしようというのがモチベーションです。
まずはファイバー束の一種である接ベクトル束について見ていきましょう。
接ベクトル束 $TM$ とは
$$ TM := \bigcup _{p \in M} T_{p} M $$
で定義されるものでした。
多様体 $M$ 全体にわたって $T _{p} M$ を集めたものですが、ここでは局所的に考えてみましょう。
$M$ のあるチャート(座標近傍) $(U_{i},\varphi_{i})$ をとってくると、可微分多様体の定義より
$$ T U_{i} \simeq \mathbb{R}^{m} \times \mathbb{R}^{m} $$
という位相同型の関係が成立します。
局所的に直積の形で書けることこそがファイバー束のアイデアの中で最も重要なものであり、単なる多様体とは異なる点です。
また、チャートの貼り合わせには規則があり接ベクトル束の場合は
$$ X^{\mu}(\boldsymbol{x}) \frac{\partial}{\partial x^{\mu}}=X^{\mu}(\boldsymbol{y}) \frac{\partial y^{\nu}}{\partial x^{\mu}} \frac{\partial}{\partial y^{\nu}} $$
という変換則が成立します。
これをリー群 $\text{GL} _{m} (\mathbb{R})$ の作用と見て一般化したのがファイバー束です。
その前に群作用について定義します。
それではファイバー束を定義しましょう。
ファイバー束の定義
いちいち $(E,\pi,M,F)$ と書くのは大変なのでこれからは $E \xrightarrow{\pi} M$ と書いて済ませてしまいます。
ところで、この定義は何を表しているのでしょうか。
(vi) は $E$ が局所的に $M \times F$ と分解できること、つまりそれぞれの開被覆 $U _{i}$ において $M \times F \supset U _{i} \times F \simeq \pi^{-1}(U_{i}) \subset E$ という微分同相の関係が成り立っていることを示しています。
その微分同相写像 $\varphi _{i}$ が局所自明化と呼ばれるものです。
(vii) は変換関数 $t_{ij}(p) := \varphi _{i,p} ^{-1} \circ \varphi _{j,p}$ が $\varphi _{j} (p,f) = \varphi _{i} (p, t_{ij} (p)f)$ を満たすことを要請するものですが、この式は変換関数が $C^{\infty}$ 級であり $\varphi _{j,p}=\varphi_{i,p} (t_{ij}(p))$ というように座標関数を変換できることを示しています。
詳しい例は本を見てください。
ベクトル束
ここではファイバーが線形空間となる場合を考えます。
$\varphi _{i,p}$ が線形同型とは $\varphi _{i,p}$ が線形写像でありかつ全単射であることをいいます。
ここでひとつベクトル束の例を見てみましょう。
$2$次元球面 $S^{2}$ を考えます。
底空間 $M$ を $S^{2},$ 全空間 $E$ をその接ベクトル束 $T S^{2}$ とするとファイバーは $T_{p} S^{2}$ で、射影 $T S^{2} \rightarrow S^{2}$ は全射です。
よってベクトル束を考えることができます。
一般に $m$ 次元可微分多様体 $M$ の接ベクトル束 $TM$ を考えると、$\varphi _{i,p} : \mathbb{R}^{m} \rightarrow T_{p}M$ は線形同型写像です。
よって $(TM,\pi,M,\mathbb{R}^{m})$ はベクトル束となります。
今まで $M$ のベクトル場と読んでいたものは $TM$ の切断 (cross section) とも呼ばれ、$\Gamma(TM)$ で表すことにします。
切断の厳密な定義を紹介しましょう。
$E=TM$ の場合、ベクトル場は $X: p \mapsto T_{p}M$ で定義されたことから $\pi \circ X(p)= \pi(T_{p}M) =p$ となり条件を満たします。
同様に、$T^{\ast}M$ の切断は余接ベクトル場の $1$-形式です。
$\Omega^{1}(M)=\Gamma(T^{\ast}M)$ と書けますね。
また、点 $p \in M$ での局所座標 $(\boldsymbol{x})=(x^{1},\cdots,x^{m})$ を使い $k$-形式で張られた線形空間 $\Omega^{k}$ を $\wedge ^{k} T^{\ast} _{p}M$ と書くことにすれば $\Omega^{k}(M)=\Gamma(\wedge ^{k} T^{\ast}M)$ と書くこともできます。
共変微分
ここまではファイバー束やベクトル束の定義を紹介するだけでしたが、ここからは実際にベクトル束の上で微分を実行していきます。
簡単のため $M=\mathbb{R}^{3}, \, F=\mathbb{R}^{2}$ とします。
ベクトル束 $E$ の切断として$2$ 次元実ベクトルに値をとる $\phi: M \rightarrow \mathbb{R}^{2}$ を考えます。
つまり、 $x \in \mathbb{R}^{3}$ で $\phi _{1}(x)$ と $\phi _{2}(x)$ を実数として
$$ \phi (x) = \begin{pmatrix} \phi _{1}(x) \\ \phi _{2}(x) \end{pmatrix} $$
と表示することにします。
$\text{GL} _{2} (\mathbb{R})$ により $2 \times 2$ の実正則行列 $g(x) \in \text{GL} _{2} (\mathbb{R})$ が左から作用して変換された $\phi'(x)$ は
\begin{eqnarray} \phi'(x) &=& g(x) \phi(x) \\ &=& \begin{pmatrix} g_{11} (x) & g_{12} (x) \\ g_{21} (x) & g_{22} (x) \end{pmatrix} \begin{pmatrix} \phi _{1}(x) \\ \phi _{2}(x) \end{pmatrix} \end{eqnarray}
と表されますね。
ここで、$g$ や $\phi$ を $0$-形式の関数だと思って $\phi'$ を外微分してみましょう。すると、
\begin{eqnarray} \text{d}\phi'(x) &=& \text{d}(g(x) \phi(x)) \\ &=& (\text{d}g)(x)\phi(x)+g(x)\text{d}\phi(x) \\ &=& \begin{pmatrix} \text{d}g_{11} (x) & \text{d}g_{12} (x) \\ \text{d}g_{21} (x) & \text{d}g_{22} (x) \end{pmatrix} \begin{pmatrix} \phi _{1}(x) \\ \phi _{2}(x) \end{pmatrix} + \begin{pmatrix} g_{11} (x) & g_{12} (x) \\ g_{21} (x) & g_{22} (x) \end{pmatrix} \begin{pmatrix} \text{d}\phi _{1}(x) \\ \text{d}\phi _{2}(x) \end{pmatrix} \end{eqnarray}
となります。
ここでは $k$-形式 $\omega$ に対する外微分のライプニッツ則 $\text{d}(\omega \wedge \xi) = \text{d} \omega \wedge \xi + ( -1)^{k} \omega \wedge \text{d} \xi$ を使いました。
ですが第1項の $(\text{d}g)(x)\phi(x)$ が邪魔で $g$ の作用に対して準同型になりません。
できればライプニッツ則を満たしつつ $g$ の作用に対して準同型になってほしいというのが実情です。
そこで、外微分に代わる「新しい微分」として $\nabla := \text{d}+A$ を用意します。
ここで、$A$ は $2 \times 2$ の行列で各成分は $1$-形式です。
$A$ の変換則として $A'=-(\text{d}g)g^{-1}+gAg^{-1}$ を定めると、
\begin{eqnarray} \nabla' \phi' &=& (\text{d}+A')\phi' \\ &=& (\text{d}-(\text{d}g)g^{-1}+gAg^{-1})(g\phi) \\ &=& (\text{d}g)\phi + g\text{d}\phi -(\text{d}g)\phi + gA\phi \\ &=& g \nabla \phi \end{eqnarray}
となり $\phi$ と同じ変換則のもと変換することができました。
もとのベクトル束の切断と同じ変換則で変換することを共変とよびます。
この $\nabla$ を接続、 $A$ をゲージ場、$A$ の変換則をゲージ変換と呼びます。
ここでは階数 $2$ のベクトル束の切断を $\phi$ としましたが、より一般の階数でも成り立ちます。
また、ベクトル場 $X$ と双対ペアリングをとり成分を取り出したものを共変微分と呼び
$\nabla _{X} \phi := \nabla \phi(X) = \text{d}\phi(X)+A\phi(X)$
とします。
ベクトル場 $X=X^{\mu}\dfrac{\partial}{\partial x^{\mu}}$ と $1$-形式 $\omega=\omega _{\nu} \text{d} x^{\nu}$ の双対ペアリングは双線形性を使い
\begin{eqnarray} \langle \omega, X \rangle &=& \left \langle \omega _{\nu} \text{d} x^{\nu} , X^{\mu}\frac{\partial}{\partial x^{\mu}} \right \rangle \\ &=& \omega _{\nu} X^{\mu} \left \langle \text{d} x^{\nu} , \frac{\partial}{\partial x^{\mu}} \right \rangle \\ &=& \omega _{\nu} X^{\mu} \delta ^{\nu} _{\mu} \\ &=& \omega _{\mu} X^{\mu} \end{eqnarray}
となることから局所座標 $(\boldsymbol{x})=(x^{1},\cdots,x^{m})$ のもとで明示すれば、$X=X^{\mu} \dfrac{\partial}{\partial x^{\mu}}$ として
$$ \nabla _{X} \phi = X^{\mu} \left( \frac{\partial \phi}{\partial x^{\mu}} +A _{\mu} \phi \right) $$
とも書けます。
ここで、ゲージ場 $A_{\mu}$ は$1$-形式ではない関数を成分とする行列でそのゲージ変換は $A'_{\mu}=-\dfrac{\partial g}{\partial x^{\mu}}g^{-1}+gA_{\mu}g^{-1}$ とします。実際、
\begin{eqnarray} \nabla' _{X} \phi' &=& X^{\mu} \left( \frac{\partial (g\phi)}{\partial x^{\mu}} +A' _{\mu} (g\phi) \right) \\ &=& X^{\mu} \left( g\frac{\partial \phi}{\partial x^{\mu}} + \frac{\partial g}{\partial x^{\mu}} \phi + \left( -\dfrac{\partial g}{\partial x^{\mu}}g^{-1}+gA_{\mu}g^{-1} \right) (g\phi) \right) \\ &=& X^{\mu} \left( g\frac{\partial \phi}{\partial x^{\mu}} + g A_{\mu} \phi \right) \\ &=& g \nabla _{X} \phi \end{eqnarray}
となるので共変微分の性質を満たしていますね。
ここで共変微分の重要な性質を示しておきましょう。
これはライプニッツ則の成立を示しています。
こうやって導入した共変微分は今までの微分の性質を満たしながら、ベクトル束といった広い範囲に対して適用できます。
それでは厳密な定義を導入しましょう。
ゲージ場やゲージ変換といった言葉が消えてしまいましたが、それらは接続の定義から導くことができます。
局所標構場というものを使えばできるのでやってみましょう。
局所標構場
局所標構場のアイデアは、ベクトル束の線形空間に基底を用意し線形結合の形で書くことです。
階数 $r$ のベクトル束 $E$ は局所的に $U_{i} \times \mathbb{R}^{r}$ (ここで $U_{i}$ は底空間 $M$ のある座標近傍) の形で書けます。
ここで局所標構場 (local frame field) とは $i$ 個の線形独立な $E$ の切断の組 $\lbrace e_{i} \rbrace = (e_{1}, \cdots, e_{r})$ であって、$M$ 上の任意の点 $p \in U_{i}$ で $\lbrace e_{i}(p) \rbrace = (e_{1}(p), \cdots, e_{r}(p))$ が線形空間 $\mathbb{R}^{r}$ の基底となるものをいいます。
そうすれば切断 $\phi \in \Gamma(E)$ は局所的に $\phi = \phi^{\mu} e_{\mu}$ と展開できます。
当然 $e_{\mu} \in \Gamma(E)$ であり、ベクトル場 $X \in \mathfrak{X}(M)$ に対して $\nabla_{X} e_{\mu}$ もまた $\Gamma(E)$ の元となります。
$\Gamma(E)$ の元であるから再び局所標構場で展開でき、$\nabla_{X} e_{\mu}=A^{\nu} _{\mu} e_{\nu}$ とできます。
そうすると共変微分の定義 (iii) より
\begin{eqnarray} \nabla _{X} (\phi) &=& \nabla _{X} (\phi^{\mu} e_{\mu}) \\ &=& X(\phi^{\mu}) e_{\mu} +\phi^{\mu}\nabla _{X} (e_{\mu}) \\ &=& X(\phi^{\mu}) e_{\mu} +\phi^{\mu}A^{\nu} _{\mu} e_{\nu} \\ &=& (X(\phi^{\mu})+A^{\mu} _{\nu}\phi^{\nu})e_{\mu} \end{eqnarray}
が得られます。ここで最後の式変形で縮約記法の添字を変えたところがあります。
さて、この形は共変微分の明示的な形
$$ \nabla _{X} \phi = X^{\mu} \left( \frac{\partial \phi}{\partial x^{\mu}} +A _{\mu} \phi \right) $$
と似ていますね。
ここからゲージ変換 $A'_{\mu}=-\dfrac{\partial g}{\partial x^{\mu}}g^{-1}+gA_{\mu}g^{-1}$ を導きます。
$\nabla _{X} (\phi)=(X(\phi^{\mu})+A^{\mu} _{\nu}\phi^{\nu})e_{\mu}$ を使いましょう。
$\nabla^{\prime}_X (\phi^{\prime}) = (\nabla_X \phi)^{\prime}$ として $\phi^{\mu} \mapsto \phi^{\prime \mu}=g^{\mu}_{\nu} \phi^{\nu}$ とすると、左辺は
\begin{eqnarray} \nabla^{\prime}_X (\phi^{\prime}) &=& (X(\phi^{\prime \mu})+A^{\prime \mu} _{\nu}\phi^{\prime \nu})e_{\mu} \\ &=& (X(g^{\mu} _{\nu} \phi^{\nu})+A^{\prime \mu} _{\nu}g^{\nu} _{\rho} \phi^{\rho})e_{\mu} \\ &=& X(g \phi)+A^{\prime} g \phi. \end{eqnarray}
一方、右辺は
\begin{eqnarray} (\nabla_X \phi)^{\prime}&=&(X(\phi^{\mu})+A^{\mu} _{\nu}\phi^{\nu})^{\prime} e_{\mu} \\ &=& g^{\mu} _{\nu} (X(\phi^{\nu})+A^{\nu} _{\rho}\phi^{\rho})e_{\mu} \\ &=& gX(\phi)+gA\phi. \end{eqnarray}
よって $X(g \phi)+A^{\prime} g \phi=gX(\phi)+gA\phi$ を得ます。式変形して、
\begin{eqnarray} X(g \phi)+A^{\prime} g \phi=gX(\phi)+gA\phi &\iff& A^{\prime} g \phi=-X(g \phi)+gX(\phi)+gA\phi \\ &\iff& A^{\prime}=(-X(g \phi)+gX(\phi)+gA\phi)(g \phi)^{-1}, \\ \end{eqnarray}
\begin{eqnarray} A^{\prime}&=&(-X(g \phi)+gX(\phi)+gA\phi)(g \phi)^{-1} \\ &=&( -X(g)\phi -gX(\phi)+gX(\phi)+gA\phi)(\phi^{-1}g^{-1}) \\ &=& ( -X(g)\phi+gA\phi)(\phi^{-1}g^{-1}) \\ &=& -X(g)g^{-1}+gAg^{-1}. \end{eqnarray}
$A^{\prime}= -X(g)g^{-1}+gAg^{-1}$ を得ることができました。
これは $A'_{\mu}=-\dfrac{\partial g}{\partial x^{\mu}}g^{-1}+gA_{\mu}g^{-1}$ と同じ意味です。
接続の曲率
ここで、接続 $\nabla$ に対して曲率を定義します。
曲率の幾何的な話はリーマン幾何学でやるので、ここではゲージ理論で必要な概念だけ押さえておきましょう。
$A$ を 行列に値を取るゲージ場(接続 $1$-形式)とし $\nabla=\text{d}+A$ とします。
この接続を試しに2回作用させてみると、外微分のライプニッツ則を使い
\begin{eqnarray} \nabla(\nabla \phi)&=&\nabla(\text{d}\phi+A\phi) \\ &=& \text{d}(\text{d}\phi+A\phi)+A \wedge (\text{d}\phi+A\phi) \\ &=& \text{d}(A \phi)+ A \wedge \text{d} \phi+ A \wedge A \phi \\ &=& (\text{d}A) \phi-A \wedge \text{d}\phi+A \wedge \text{d}\phi+A \wedge A \phi \\ &=&(\text{d}A+A \wedge A) \phi \end{eqnarray}
になります。
ここで $A$ は行列であり、一般に $A \wedge A$ は $0$ になるとは限りません。
この $F := \text{d}A+ A \wedge A$ こそが曲率 $2$-形式と呼ばれるもので、接続の曲率を記述するものになります。
ここで外微分の拡張として共変外微分を導入します。
外微分のライプニッツ則の類推と考えれば分かりやすいでしょう。
ひとつ定理を示します。
ここで $k$-形式 $\omega$ に対して $\omega(X,Y)=(\iota_{X} \omega)(Y)$ であり、$\omega (Y)$ は双対ペアリングで縮約をとった $(k-1)$-形式を表します。
証明はめんどくさくなったので書籍を見てください。
ここで、接続 $\nabla$ の曲率を $D^{2}$ で定めます。
この定理において $f \omega \mapsto Df$ とすれば、共変微分の定義 $\nabla_{X} \phi= \nabla \phi(X)$ より
\begin{eqnarray} D^{2}f(X,Y)&=&\nabla_{X} (Df(Y))-\nabla_{Y}(Df(X))-Df([X,Y]) \\ &=& \nabla_{X}(\nabla_{Y} f) - \nabla_{Y}(\nabla_{X} f) - \nabla_{[X,Y]} f. \end{eqnarray}
特に $R(X,Y)=[\nabla_{X}, \nabla_{Y}]-\nabla_{[X,Y]}$ として、$R(X,Y)Z$ はリーマン曲率テンソルとも言われます。
リーマン幾何の章で活躍するので覚えておいてください。
最後にビアンキの恒等式を導きます。
$k$-形式 $\omega$ に対して $D^{2} \omega = R \wedge \omega$ ですね。
($R$ は曲率、つまり $R(X,Y)$ のベクトル場を作用させる前の $2$-形式です)
$0$-形式 $f$ をもって $1$-形式 $\omega=Df$ を代入すると、$D^{2}(Df)= R \wedge Df$ および $DR \cdot f + R \wedge Df$ が得られます。
$R \wedge Df=DR \cdot f + R \wedge Df$ よりビアンキの恒等式、$DR=0$ が得られます。
接続 $1$-形式 $\omega$ で曲率 $2$-形式 $\Omega$ を $\Omega= \text{d} \omega + \omega \wedge \omega$ とすれば、ビアンキ恒等式は
$$ \text{d} \Omega +[\omega, \Omega]=0 $$
となります。
ここで、$[\omega, \Omega]= \omega \wedge \Omega - \Omega \wedge \omega$ です。
このビアンキ恒等式がゲージ理論で活躍することになります。
ここから先は第5章に続きます。
微分幾何入門(森北出版)の解説 <第3章 -リー微分とリー群->
この記事の続きです。
mitsuki-science.hatenablog.com
まだ読まれてない方は先にどうぞ。
この記事ではリー群を取り扱います。
*この記事は「微分幾何入門(森北出版)」の解説です。この記事の内容だけでは完全な学習になりません。必ず書籍を手元において学習を進めてください。
リー微分のアイデア
これまで多様体上にベクトル場や微分形式を定義してきましたが、これからはそのベクトル場や微分形式をどうやって微分していくかを考えます。
高校数学を振り返ってみれば、関数 $f(x)$ の導関数は
$$ \frac{\text{d} f(x)}{\text{d}x} := \lim _{h \to 0} \frac{f(x+h)-f(x)}{h} $$
で定義されるのでした。
ですが $m$ 次元可微分多様体 $M$ 上では点の近づけ方が無数あり、上手く導関数を定めることができません。
そこでベクトル場に沿って微分するというアイデアを使います。
積分曲線の定義を見てみましょう。
この積分曲線を使って $M$ から $M$ への写像を定義しましょう。
これはどんな現象を表しているのかというと、$t=0$ を初期位置として $p \in M$ が $X$ の積分曲線に沿って変化していく感じです。
流れには重要な性質があります。
これは $\mathbb{R}$ 上の加算と $\text{Map}(M,M)$ 上の写像の合成を結ぶ群準同型になっていますね。
群と群準同型について軽く復習しておきましょう。
ちなみに、すべての $g,h \in G$ に対して $g \ast h = h \ast g$ が成り立つような群 $G$ を可換群といいます。
明らかに $(\mathbb{R},+)$ は可換群です。
また、写像の合成 $\circ$ は結合的であり $\varphi _{s+t}(p)=(\varphi _{s} \circ \varphi _{t})(p)$ および $\varphi _{0}(p) =p$ が成立することから $(\varphi _{t}, \circ)$ も可換群をなします。
これが $1$-パラメータ群と呼ばれるものです。
スカラー関数のリー微分
これから $m$ 次元可微分多様体 $M$ 上に定義されるリー微分について見ていきましょう。
まずはスカラー関数のリー微分です。
スカラー関数とは写像 $g : M \rightarrow \mathbb{R}$ であってベクトル場でも微分形式でもないものをいいます。
ここで $X$ を $M$ 上のベクトル場とし、$\varphi _{t}(p)$ を流れとします。
これによりスカラー関数に対するリー微分が定義されます。
これは定義ですが、なんのことだかわからないと思うのでさっそく計算してみましょう。
よって $g$ がスカラー関数の場合、$\mathcal{L} _{X} g=Xg$ となります。
ベクトル場のリー微分
次はベクトル場 $Y(\boldsymbol{x})=Y^{\nu}(\boldsymbol{x})\dfrac{\partial}{\partial x^{\nu}}$ をリー微分していきましょう。
さきほどと同じように考えて $\lim _{\Delta t \to 0} \dfrac{Y(\varphi _{\Delta t}(\boldsymbol{x}))-Y(\boldsymbol{x})}{\Delta{t}}$ としたいところですが、$\varphi _{\Delta t}(\boldsymbol{x})$ と $\boldsymbol{x}$ では座標が異なるためそのままでは上手く引けません。
そこで変数変換、つまり押し出しを使います。
ベクトル場に対するリー微分を定義しましょう。
押し出しを使うことにより同じ座標でベクトル場の差を求めることができるようになりました。
さっそく計算しましょう。
よって $Y$ がベクトル場のとき、$\mathcal{L} _{X} Y=[X,Y]$ となります。
微分形式のリー微分
今度は微分形式をリー微分していきます。
ベクトル場のリー微分にならい、今度は引き戻しを使ってリー微分を定義します。
さっそく計算しましょう。
よって、$\omega$ が微分形式のとき $\mathcal{L} _{X} \omega=\text{d} (\iota _{X} \omega)+\iota _{X} (\text{d} \omega)$ となります。
また、証明はめんどくさいのでしませんが一般のテンソルに対してもリー微分が定義でき、
$$ \mathcal{L} _{X} (T_{1} \otimes T_{2}) = (\mathcal{L}_{X} T_{1}) \otimes T_{2} + T_{1} \otimes (\mathcal{L} _{X} T_{2}) $$
を満たします。
リー代数とリー群
これまでのことをまとめましょう。
スカラー関数 $g$ に対しては $\mathcal{L} _{X} g=Xg.$
ベクトル場 $Y$ に対しては $\mathcal{L} _{X} Y=[X,Y].$
微分形式 $\omega$ に対しては $\mathcal{L} _{X} \omega= \text{d}(\iota _{X} \omega) + \iota _{X} (\text{d} \omega).$
テンソル $T_{1},T_{2}$ に対しては $\mathcal{L} _{X} (T_{1} \otimes T_{2}) = (\mathcal{L}_{X} T_{1}) \otimes T_{2} + T_{1} \otimes (\mathcal{L} _{X} T_{2}).$
ここでリー代数を定義します。
ここで、交代性よりリー括弧積は2番目の引数に対しても線形性を満たし双線形となります。
ベクトル場に定義された $[X,Y]=XY-YX$ は上記3つの条件を満たすのでリー括弧積といえます。
一つのわかりやすい例として、ベクトルの外積 $[\boldsymbol{u},\boldsymbol{v}]=\boldsymbol{u} \times \boldsymbol{v}$ を想像してみてください。
(i) $\boldsymbol{u} \times \boldsymbol{v} = -\boldsymbol{v} \times \boldsymbol{u}$
(ii) $(a \boldsymbol{u} + b \boldsymbol{v}) \times \boldsymbol{w} = a \boldsymbol{u} \times \boldsymbol{w} + b \boldsymbol{v} \times \boldsymbol{w}$
(iii) $(\boldsymbol{u} \times \boldsymbol{v}) \times \boldsymbol{w} + (\boldsymbol{v} \times \boldsymbol{w}) \times \boldsymbol{u} + (\boldsymbol{w} \times \boldsymbol{u}) \times \boldsymbol{v} =0$
これらの条件からリー括弧積は外積の一般化であるといえます。
リー群についても見ておきましょう。
群の中には $k$ 次対称群 $\mathfrak{S} _{k}$ のように不連続なものもありますが、リー群はその中でも連続で微分可能なものです。
この性質が後々活躍していくことになります。
線形リー群
ここではリー群の中でも物理学で特に活躍するものを紹介しましょう。
まずは一般線型群 (General linear group) $\text{GL} _{n}(\mathbb{R})$ です。
これは $n \times n$ で実数成分の正則行列を集めてできた群で、演算は行列の積です。
これが群であることは簡単に確かめられます。
次に特殊線型群 (Special linear group) $\text{SL} _{n} (\mathbb{R})$ で、$\text{GL} _{n} (\mathbb{R})$ の中でも行列式が $1$ の行列を集めてできる群です。
準同型 $\det (AB) = \det A \det B$ が成り立つことからこれも群であることが確かめられます。
同様に、$n \times n$ の実直交行列からなる群を直交群 (Orthogonal group) と呼び $\text{O}(n)$ で表し、その中でも行列式が $1$ の行列を集めた群を特殊直交群 (Special orthogonal group) といい $\text{SO}(n)$ で表します。
2つの直交行列の積はまた直交行列になることから群をなすことは明らかです。
最後にユニタリ群について紹介しましょう。
行列 $A$ を $n \times n$ の複素数成分の正則行列とします。
$A$ のエルミート共役 $A^{\dagger}$ (または $A^{\ast}$)は $A$ の成分の複素共役をとって転置した行列を表すことにし、$A^{\dagger}:=(\bar{A})^{\top}=\overline{(A^{\top})}$ とします。
このとき $A$ がユニタリ行列 (unitary matrix) であるとは、$I$ を単位行列として $A A^{\dagger} = A^{\dagger} A = I$ を満たすことをいいます。
$n \times n$ のユニタリ行列を集めてできた群を $\text{U}(n)$ で表し、ユニタリ群 (unitary group) と呼びます。
また、ユニタリ行列の中でも行列式が $1$ のものを集めてできる群を $\text{SU}(n)$ で表し、特殊ユニタリ群 (special unitary group) と呼びます。
ここでは $\text{SU}(n)$ が群をなすことを確かめてみましょう。
特殊ユニタリ群はゲージ理論においても重要になってくるので頭の片隅に置いておいてください。
リー代数とリー群の関係
私が最初にリー代数とリー群の定義を見たとき、全く別の概念であるように感じていました。
ですが実際は両者は密接に結びついていて、リー代数には対応するリー群が、同様にリー群には対応するリー代数があります。
リー群が大域的な対称性を記述するものだとすれば、リー代数は局所的な対称性を記述するものだと言えます。
リー代数は線形性があるので研究しやすく、リー群とリー代数は行き来できるのでその性質を利用できるというわけです。
ためしに$2 \times 2$の特殊ユニタリ群 $\text{SU}(2)$ に対応するリー代数 $\mathfrak{su}(2)$ を導いてみましょう。
その前に行列の指数関数を定義します。
テイラー展開に行列を代入したような形ですね。
この指数関数こそがリー群とリー代数の架け橋です。
これを使いリー代数を導きます。
特殊ユニタリ群 $\text{SU}(2)$ は $AA^{\dagger}=I, \, \det A= 1$ を満たす $2 \times 2$ 行列 $A$ の集まりでした。
いきなりですが $t$ を実数、$P$ を行列としてこの定義に $A= e^{tP}$ を代入すると、$e^{tP}(e^{tP})^{\dagger}=I, \, \det e^{tP}=1$ が得られます。
(i) $e^{tP}(e^{tP})^{\dagger}=I$
エルミート共役 $\dagger$ は線形性を満たすので $(e^{tP})^{\dagger}=e^{tP^{\dagger}}$ が得られ、指数関数の性質より
\begin{eqnarray} e^{tP}(e^{tP})^{\dagger} &=& e^{tP}e^{tP^{\dagger}} \\ &=&e^{t(P+P^{\dagger})} \\ &=& I. \end{eqnarray}
この条件が満たされるのは $P+P^{\dagger}$ が零行列のとき、つまり $P^{\dagger}=-P$ のときに限ります。
(ii) $\det e^{tP}=1$
補題を示します。
本題に戻りましょう。
$\det e^{tP}=1$ より、
\begin{eqnarray} \det e^{tP}&=&e^{\text{tr}(tP)} \\ &=& e^{t \cdot \text{tr}(P)} \\ &=& 1. \end{eqnarray}
よって $t \cdot \text{tr}(P)=0,$ つまり $\text{tr}(P)=0$ を得ます。
以上より $P^{\dagger}=-P, \, \text{tr}(P)=0$ の条件を得ます。
これがリー代数 $\mathfrak{su}(2)$ に課された条件です。
次に具体的な行列表示を求めていきましょう。
$$ P=\pmatrix{a^{1}_{1}+b^{1}_{1}i & a^{1}_{2}+b^{1}_{2}i \\ a^{2}_{1}+b^{2}_{1}i & a^{2}_{2}+b^{2}_{2}i} $$
と表すと、
(i) $P^{\dagger}=-P$
$$ \pmatrix{a^{1}_{1}-b^{1}_{1}i & a^{2}_{1}-b^{2}_{1}i \\ a^{1}_{2}-b^{1}_{2}i & a^{2}_{2}-b^{2}_{2}i} = -\pmatrix{a^{1}_{1}+b^{1}_{1}i & a^{1}_{2}+b^{1}_{2}i \\ a^{2}_{1}+b^{2}_{1}i & a^{2}_{2}+b^{2}_{2}i} $$
より $a^{1}_{1}=a^{2}_{2}=0. \, a^{1}_{2}=-a^{2}_{1}, \, b^{1}_{2}=b^{2}_{1}$ を得ますね。
(ii) $\text{tr}(P)=0$
\begin{eqnarray} \text{tr} \pmatrix{a^{1}_{1}+b^{1}_{1}i & a^{1}_{2}+b^{1}_{2}i \\ a^{2}_{1}+b^{2}_{1}i & a^{2}_{2}+b^{2}_{2}i} &=& a^{1}_{1}+b^{1}_{1}i+a^{2}_{2}+b^{2}_{2}i \\ &=& 0 \end{eqnarray}
より $a^{1}_{1}+a^{2}_{2}=b^{1}_{1}+b^{2}_{2}=0$ を得ます。
以上より、$b^{1}_{1}=a, a^{1}_{2}=b, b^{1}_{2}=c$ を実数とすると
$$ P=\pmatrix{ia & b+ic \\ -b+ic & -ia} $$
が得られました。
これがリー代数 $\mathfrak{su}(2)$ の一般系です。
また、リー括弧積 $[X,Y]$ は $X,Y$ を行列として $[X,Y]=XY-YX$ と定義されます。
よって $\text{SU}(2)$ のリー代数 $\mathfrak{su}(2)$ は
$$ \mathfrak{su}(2) = \left \lbrace a,b,c \in \mathbb{R} \left | \pmatrix{ia & b+ic \\ -b+ic & -ia} \right . \right \rbrace, \, [X,Y] =XY-YX $$
で表されます。
最後に、リー代数の条件である $[,] : V \times V \rightarrow V$ を確かめないといけません。
行列表示から直接確かめることもできますが、ここではエレガントな方法で証明しましょう。
リー代数 $\mathfrak{su}(2)$ の基底として
$$ T_{1} = \frac{i}{2} \pmatrix{0 & 1 \\ 1 & 0}, \, T_{2} = \frac{i}{2} \pmatrix{0 & -i \\ i & 0}, \, T_{1} = \frac{i}{2} \pmatrix{1 & 0 \\ 0 & -1} $$
が取れます。ここで、これらの係数 $\dfrac{i}{2}$ を外した行列3つはパウリ行列と言われるものです。
簡単な計算により $[T_{1}, T_{2}] = T_{3}, \, [T_{2}, T_{3}] = T_{1}, \, [T_{3}, T_{1}] = T_{2}$ が分かります。
$\mathfrak{su}(2)$ の元はこれら3つの基底で書かれることから $[,] : \mathfrak{su}(2) \times \mathfrak{su}(2) \rightarrow \mathfrak{su}(2)$ が証明されました。
ここから先は第4章に続きます。
微分幾何入門(森北出版)の解説 <第2章 -微分形式->
この記事の続きです。
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まだ読まれていない方は先に読んでください。
この記事では微分形式を取り扱います。
*この記事は「微分幾何入門(森北出版)」の解説です。この記事の内容だけでは完全な学習になりません。必ず書籍を手元において学習を進めてください。
微分形式のアイデア
ここから微分形式の世界に足を踏み入れていきます。
その前にヤコビアンについて復習しましょう。
重積分では変数変換するときヤコビアンが必要でした。
明示すると、座標 $(\boldsymbol{x})$ を座標 $(\boldsymbol{u})$ へ線形変換したときのヤコビアン $J(\boldsymbol{x},\boldsymbol{u})$ の $ij$ 成分は
$$ \frac{\partial x^{i}}{\partial u^{j}} $$
で定義されるのでした。
そして、そのヤコビアンの行列式が重積分の値を表すことになります。
ただし、重積分の際はヤコビアンの絶対値を使うことに注意してください。
ここで、行列式の性質について注目してみます。
$\boldsymbol{u}$ と $\boldsymbol{v}$ を $2$ 次元の列ベクトルとします。そのとき、
$$ \det (\boldsymbol{u} \boldsymbol{v}) = -\det (\boldsymbol{v} \boldsymbol{u}) $$
が成立します。
これは一般の次元でも同じで、行列式は行(列)ベクトルを入れ替えると符号が反転するという性質があります。
これを一般化しましょう。
外積代数
これからしたいことは反対称性を持った代数を作ることです。
反対称性とは、2つの要素を入れ替えると符号が反転する性質のことです。つまり、
$$ f(x^{1},\cdots,x^{i},\cdots,x^{j},\cdots, x^{n})=-f(x^{1},\cdots,x^{j},\cdots,x^{i},\cdots, x^{n}) $$
が成立することです。
ここで、$u \wedge v := u \otimes v -v \otimes u$ としましょう。
$\otimes$ が非可換であり $\mathbb{R}$ 上の双線形写像であることに注意してください。
すると、$u \wedge v=-v \wedge u$ が成立することが確かめられます。
これは行列式の性質と同じです。
全く同様に、
$$ u \wedge v \wedge w:= u \otimes v \otimes w + v \otimes w \otimes u + w \otimes u \otimes v - v \otimes u \otimes w - u \otimes w \otimes v - w \otimes v \otimes u $$
とすればこれも行列式と同じ性質を満たします。
ここで多様体の話に戻ります。
$m$ 次元多様体 $M$ の点 $p$ を含む座標近傍 $(U,\varphi)$ を考え、その局所座標を $(\boldsymbol{x})=(x^{1},\cdots,x^{m})$ とします。
添字の数を $k$ として様子を見てみましょう。
$k=0$ の場合:$1$
$k=1$ の場合:$\text{d}x^{\mu}$
$k=2$ の場合:$\text{d}x^{\mu} \wedge \text{d}x^{\nu} = \text{d}x^{\mu} \otimes \text{d}x^{\nu} - \text{d}x^{\nu} \otimes \text{d}x^{\mu}$
一般化しましょう。すると、
$$ \text{d}x^{\mu _{1}} \wedge \cdots \wedge \text{d}x^{\mu _{k}} = \sum_{\sigma \in \mathfrak{S} _{k}} \text{sgn}(\sigma) \text{d}x^{\mu _{\sigma(1)}} \otimes \cdots \otimes \text{d}x^{\mu _{\sigma(k)}} $$
となります。
ここで、$\mathfrak{S} _{k}$ は $k$ 次対称群です。
このとき、$k$ 次微分形式 (k-differential form) は次で定義されます:
$$ \omega = \frac{1}{k!} \sum _{1 \leq \mu _{1} < \cdots < \mu _{k} \leq m} \omega_{\mu _{1} \cdots \mu _{k}} \text{d} x^{\mu _{1}} \wedge \cdots \wedge \text{d}x^{\mu _{k}}. $$
ここで、$\omega_{\mu _{1} \cdots \mu _{k}}$ は $C^{\infty}$ 級の $U$ 上の関数です。
これが微分形式の定義です。
ここで、和の範囲が $1 \leq \mu _{1} < \cdots < \mu _{k} \leq m$ となっているのは $\text{d} x^{\mu _{1}} \wedge \cdots \wedge \text{d}x^{\mu _{k}}$ が行列式と同じく反対称性を持つからです。つまり、
$$ \text{d} x^{\mu _{1}} \wedge \cdots \wedge \text{d}x^{\mu _{i}} \wedge \cdots \wedge \text{d}x^{\mu _{j}} \wedge \cdots \wedge \text{d}x^{\mu _{k}}=-\text{d} x^{\mu _{1}} \wedge \cdots \wedge \text{d}x^{\mu _{j}} \wedge \cdots \wedge \text{d}x^{\mu _{i}} \wedge \cdots \wedge \text{d}x^{\mu _{k}}. $$
この性質により $1 \leq \mu _{1} < \cdots < \mu _{k} \leq m$ を課さないと項が打ち消し合ってしまいます。
なので微分形式は反対称性を持った要素の線形結合ということができます。
厳密な定義はこれです:
$ij$ 成分が $a^{i} _{j}$ である $n \times n$ 行列 $A$ の行列式の定義が
$$ \det(A)=\sum _{\sigma \in \mathfrak{S} _{k}} \text{sgn}(\sigma) a^{\sigma(1)} _{1} \cdots a^{\sigma(n)} _{n} $$
であることを思い出せば、微分形式は行列の一般化であることが簡単にわかりますね。
反対称性から次の定理が簡単に得られます。
また、$\dfrac{1}{k!}$ がつくのは計算の都合であって本質的な理由はありません。
ここで、微分形式からつくられる空間に対して記号を与えておきましょう。
座標を変換しても基底が変換されるだけで空間が変わるわけではないことからこの定義は有効です。
さらに厳密に定義するならば、$\Omega^{k}$ は $\mathbb{R}^{m}$ 上の 交代 $k$-線形形式の線形空間です。
これで外積が定義できます。
外積
外積には次のような性質があります:
今まで $\omega _{\mu _{1} \cdots \mu _{q}}$ や $\omega _{\mu _{1} \cdots \mu _{q}}$ は各変数に対応する複数のスカラーと思ってきましたが、それを複数の $C^{\infty}$ 級関数と思って微分形式と積を可換にすれば全く同じ状況で議論ができます。
ここで多様体 $M$ 全体にわたって $k$ 次微分形式を集めた線形空間 $\Omega^{k}(M)$ を定義しておきます。
$\Omega^{k}(M)$ は線形空間ですが多様体ではありません。
チャートが存在しないからです。
ここで、微分形式が本当に重積分の変数変換と対応しているのか見てみましょう。
その前にレビ・チビタの完全反対称テンソルとよばれるものを定義します。
つまり、添字に重複がなければ置換の符号で、重複があれば $0$ になるというだけのことです。
座標 $(\boldsymbol{x})=(x^{1},\cdots,x^{k})$ から $(\boldsymbol{y})=(y^{1},\cdots,y^{k})$ へと変換します。
そうすると、
\begin{eqnarray} \text{d}x^{1} \wedge \cdots \wedge \text{d}x^{k} &=& \left (\frac{\partial x^{1}}{\partial y^{\mu _{1}}} \text{d}y^{\mu _{1}} \right) \wedge \cdots \wedge \left (\frac{\partial x^{k}}{\partial y^{\mu _{k}}} \text{d}y^{\mu _{k}} \right) \\ &=& \frac{\partial x^{1}}{\partial y^{\mu _{1}}} \cdots \frac{\partial x^{k}}{\partial y^{\mu _{k}}} \text{d} y^{\mu _{1}} \wedge \cdots \wedge \text{d} y^{\mu _{k}} \\ &=& \epsilon ^{\mu _{1} \cdots \mu _{k}} \frac{\partial x^{1}}{\partial y^{\mu _{1}}} \cdots \frac{\partial x^{k}}{\partial y^{\mu _{k}}} \text{d} y^{1} \wedge \cdots \wedge \text{d} y^{k} \\ &=& \det \left ( \frac{\partial x^{i}}{\partial y^{j}} \right) _{1 \leq i,j \leq k} \text{d} y^{1} \wedge \cdots \wedge \text{d} y^{k} \\ &=& \det J(\boldsymbol{x},\boldsymbol{y}) \text{d} y^{1} \wedge \cdots \wedge \text{d} y^{k} \end{eqnarray}
と見事にヤコビアンが出現しました。
微分の変数変換のルールを元に微分をさらに一般化したものが微分形式で、多様体の上で積分をするのにものすごく強力な道具になります。
さて、関数 $f \in C^{\infty}(\mathbb{R}^{m})$ は $0$-形式ですがその全微分 $\text{d}f = \dfrac{\partial f}{\partial x^{\mu}} \text{d} x^{\mu}$ は $1$-形式になります。
全微分は次数を1つ上げると言えますね。
外微分と内部積
話をさらに発展させるために外微分を定義します。
性質を見ていきましょう。
ここで局所座標を使わずに微分形式や外積を定義し直すこともできますが、議論が難しくなりすぎるのであとでまた戻ってやるとしましょう。
次に微分形式の次数を1つ落とす内部積を定義します。
あるベクトル場 $X=X^{\mu} \dfrac{\partial}{\partial x^{\mu}}$ があるとして内部積 $\iota _{X} \omega$ を次で定義します:
具体的な意味は後で行う計算でわかるはずです。
これで多様体上の積分を扱う準備ができました。
通常の重積分にならい定義していきます。
多様体上の積分
試しに可微分多様体として単位円 $S^{1}$ を取りましょう。
$S^{1}$ 上で $1$-形式 $\omega = -y \text{d}x+x \text{d}y$ を積分します。
普通に計算すると、$S^{1}$ 上では $(x,y) \rightarrow (\cos \theta, \sin \theta)$ とできることから
\begin{eqnarray} \omega &=& -y \text{d}x+x \text{d}y \\ &=& -\sin \theta ( -\sin \theta \text{d} \theta)+ \cos \theta (\cos \theta \text{d} \theta) = \text{d} \theta. \end{eqnarray}
よって
\begin{eqnarray} \int _{S^{1}} \omega &=& \int^{2 \pi} _{0} \text{d} \theta \\ &=& 2 \pi. \end{eqnarray}
このように値が求まりました。
ですがいつもこのようにして値が求められるわけではありません。
さらに複雑な多様体の場合は別の方法を考える必要があります。
思い出せば、多様体は $\mathbb{R}^{m}$ と対応できるチャートの張り合わせでした。
ということは、チャートの積分を通常の $\mathbb{R}^{m}$ 上の重積分と対応させてあとですべて足せば値が求まるはずです。
やってみましょう。
開被覆として $U _{1} = \left \lbrace (\cos \theta, \sin \theta) \, \left | \, 0 < \theta < \dfrac{3}{2} \pi \right . \right \rbrace,$ $U _{2} = \left \lbrace (\cos \theta, \sin \theta) \, \left | \, \pi < \theta < \dfrac{5}{2} \pi \right . \right \rbrace$ を選びそれらに対応する $\mathbb{R}$ の部分集合を $V _{1} = \left \lbrace \theta \in \mathbb{R} \left | 0 < \theta < \dfrac{3}{2} \pi \right . \right \rbrace,$ $V _{2} = \left \lbrace \theta \in \mathbb{R} \left | \pi < \theta < \dfrac{5}{2} \pi \right . \right \rbrace$ ととります。
そうすると最初にやった例と同じく $\varphi _{1} (U _{1}) = V _{1},$ $\varphi _{2} (U _{2}) = V _{2}$ となる同相写像 $\varphi _{1}, \varphi _{2}$ がとれますね。
ただ、このまま積分を実行すると $U _{1} \cap U _{2} \neq \varnothing$ の部分が二重になってしまい正しい値が得られません。
そこでどうするかというと重複した部分には重みをつけて、つまり適切な係数をかけることによって二重になることを回避します。
$1$の分割という概念を導入しましょう:
これは値が重複しないように重み付けしていると考えることができます。
たとえば二重に重複しそうになるとき、両方に $\dfrac{1}{2}$ という係数をかけて足せばそれを防ぐことができますね。
これにより積分を計算してみましょう。
今回 $i = 1,2$ なので、
\begin{eqnarray} \int _{S^{1}} \omega &=& \sum _{i =1,2} \int _{U _{i}} \rho _{i} \omega \\ &=& \sum _{i=1,2} \int _{V _{i}} \rho _{i} (\varphi ^{-1}(\theta)) \omega (\varphi ^{-1} (\theta)) \\ &=& \sum _{i=1,2} \int _{V _{i}} \rho _{i} (\varphi ^{-1}(\theta)) \text{d} \theta \\ &=& \int _{0} ^{\frac{\pi}{2}} \rho _{1}(\theta) \text{d} \theta + \int _{\frac{\pi}{2}} ^{\pi} \rho _{1}(\theta) + \rho _{2}(\theta) \text{d} \theta + \int _{\pi} ^{\frac{3}{2} \pi} \rho _{1} (\theta) + \rho _{2}(\theta) \text{d} \theta \\ &&+ \int _{\frac{3}{2} \pi} ^{2\pi} \rho _{1} (\theta) + \rho _{2}(\theta) \text{d} \theta + \int _{2 \pi} ^{\frac{5}{2} \pi} \rho _{2} (\theta) \text{d} \theta \\ &=& \frac{\pi}{2}(\rho _{1} +\rho _{2}) + \frac{3}{2} \pi \\ &=& 2 \pi. \end{eqnarray}
と求めたい値に一致しました。
いくつか補足しておきます。
まず2番目の等号で $U _{i}$ の世界から $V _{i} \in \mathbb{R}$ の世界へと変数変換しました。
これは置換積分と全く同じ仕組みです。
次に、アトラスの情報だけをもとに $1$ の分割を使い微分形式を変形しながら積分を実行しました。
微分形式が変数変換の仕組みを完璧に再現していることがわかりますね。
もっと一般化しましょう。
ただこの定義がうまく整合しない場合が出てきます。
というのも、$\mathbb{R}^{m}$ 上の重積分では変数変換の際に必ずヤコビアンの行列式に絶対値を課していたからです。
もしヤコビアンの行列式が正になるような座標を選べないとすれば重積分が定義できなくなってしまいます。
つまり、多様体の貼り合わせが重なっている部分で座標変換したとき積分値が変わってしまうと非常に困ります。
明示的に書き下しましょう。
$(U _{i}, \varphi _{i}),(U _{j}, \varphi _{j})$ をチャートとし $U _{i} \cap U _{j} \neq \varnothing$ とします。
$\varphi _{i} (U _{i})= V _{i} \subset \mathbb{R}^{m}, \varphi _{j} (U _{j})= V_{j} \subset \mathbb{R}^{m}$ ですね。
$p \in U _{i} \cap U_{j}$ とし、$U_{i}$ での局所座標を $\varphi _{i}(p) = (x^{1},\cdots,x^{m}),$ $U _{j}$ での局所座標を $\varphi _{j}(p) = (y^{1},\cdots,y^{m})$ とします。
このとき $m$-形式 $\omega=\omega _{i} \text{d}x^{1} \wedge \cdots \wedge \text{d}x^{m}$ の積分を変数変換していきましょう。
$\omega _{i} \text{d}x^{1} \wedge \cdots \wedge \text{d}x^{m}=\omega _{j} \text{d}y^{1} \wedge \cdots \wedge \text{d}y^{m}$ とします。
$\omega _{j} \text{d}y^{1} \wedge \cdots \wedge \text{d}y^{m} = \omega _{j} \epsilon^{\mu _{1} \cdots \mu _{m}} \dfrac{\partial y^{1}}{\partial x^{\mu _{1}}} \cdots \dfrac{\partial y^{m}}{\partial x^{\mu _{m}}} \text{d} x^{1} \wedge \cdots \wedge \text{d} x^{m}$ より
$\omega _{i} = \omega _{j} \det J(\boldsymbol{y},\boldsymbol{x})$ です。よって
\begin{eqnarray} && \int _{U_{i}} \omega \\ &=& \int _{\varphi _{i}(U _{i})} \omega _{i} \text{d}x^{1} \cdots \text{d}x^{m}. \\ &=& \int _{V _{i}} \omega _{i} \text{d}x^{1} \cdots \text{d}x^{m}. \\ &=& \int _{V _{i}} \omega _{j} \det J(\boldsymbol{y},\boldsymbol{x}) |\det J(\boldsymbol{x},\boldsymbol{y})| \text{d}y^{1} \cdots \text{d}y^{m} \end{eqnarray}
ここでもし $\det J(\boldsymbol{y},\boldsymbol{x})>0$ であれば、 $\det A \det B = \det (AB)$ と $J(\boldsymbol{y},\boldsymbol{x})J(\boldsymbol{x},\boldsymbol{y})=I$ ($I$ は単位行列) より
\begin{eqnarray} &=& \int _{V _{i}} \omega _{j} |\det J(\boldsymbol{y},\boldsymbol{x})| |\det J(\boldsymbol{x},\boldsymbol{y})| \text{d}y^{1} \cdots \text{d}y^{m} \\ &=& \int _{V _{i}} \omega _{j} |\det (J(\boldsymbol{y},\boldsymbol{x})J(\boldsymbol{x},\boldsymbol{y}))| \text{d}y^{1} \cdots \text{d}y^{m} \\ &=& \int _{V _{i}} \omega _{j} |\det I| \text{d}y^{1} \cdots \text{d}y^{m} \\ &=& \int _{V _{i}} \omega _{j} \text{d}y^{1} \cdots \text{d}y^{m} \\ &=& \int _{U _{j}} \omega \end{eqnarray}
となり積分値が等しくなります。
ですがもし $\det J(\boldsymbol{y},\boldsymbol{x})<0$ であったとすれば、符号が反転し違う値になってしまいます。
なので「ヤコビアンの行列式が正になるような座標を取れる」という条件を課さないといけません。
それを向き付け可能 (orientable) といいます。
これで多様体の上で微分形式の積分ができるようになりました。
ストークスの定理
微分形式の一つの重要な結果であるストークスの定理を紹介します。
と、その前に補題を示しておきましょう。
簡単に言えば、$\omega$ の台がコンパクトであるとはコンパクトな集合の外部では $\omega=0$ となるということです。
ある集合がコンパクトであるとは、簡単に言えば $[a,b]$ みたいに連続で閉じた集合みたいなものです。
コンパクトな集合の内部でのみ積分を考えたとき、その外微分の積分値は必ず $0$ になることを主張しています。
証明はめんどくさいので本を見てみてください。
ここで、多様体上に境界というものを考えてみましょう。
厳密な定義から。
これはどういう意味なのでしょうか。
たとえば $xy$ 平面で $x \geq 0$ の描く領域を思い浮かべてください。
そのとき $y$ 軸が境界となって $xy$ 平面が切断されたように思えます。
つまり、 $x^{m} \geq 0$ という条件を課すことにより多様体に境界を定義することができるのです。
ここで、$M$ が向き付け可能ならば $\partial M$ もまた向き付け可能です。
どのようにして向きを定めるのか見ていきましょう。
$M$ の座標近傍 $U _{\alpha}$ と $U _{\beta}$ を $\partial M \cap (U _{\alpha} \cap U _{\beta}) \neq \varnothing$ を満たすように選んできます。
$U _{\alpha}$ の局所座標を $(x^{1},\cdots,x^{m}$ とすると、$\partial \cap U _{\alpha}$ で $x^{m}=0$ です。
$\partial M$ を $(m-1)$ 次元可微分多様体と考えたとき、開被覆を $\partial M \cap U _{\alpha}$ でとるとその上に自然に座標関数 $\varphi _{\alpha} (p)=(x^{1},\cdots,x^{m-1})$ が決まります。
全く同様に、$U _{\beta}$ の局所座標を $(y^{1},\cdots,y^{m})$ とすると $\partial M \cap U _{\beta}$ で $y^{m}=0$ です。
$U _{\alpha}$ と $U _{\beta}$ が 境界 $\partial M$ 上で重なりを持つ場所 $\partial M \cap U _{\alpha} \cap U _{\beta}$ で $x \mapsto y=y(x)$ とし、座標変換を
$$ \frac{\partial y^{m}}{\partial x^{i}}=0 \, \, \, (1 \leq i \leq m-1) $$
となるように定めます。また $\dfrac{\partial y^{m}}{\partial x^{m}}$ は正値関数であるとします。
このとき $\partial M \cap U _{\alpha} \cap U _{\beta}$ でのヤコビアン $J(\boldsymbol{y},\boldsymbol{x})$ を計算すると
\begin{eqnarray} \det J(\boldsymbol{y},\boldsymbol{x})= \det \begin{pmatrix} X & \boldsymbol{v} \\ O & \frac{\partial y^{m}}{\partial x^{m}} \end{pmatrix} \end{eqnarray}
ここで $(m-1) \times (m-1)$ 行列 $X$ の $ij$ 成分は $X^{i} _{j}=\dfrac{\partial y^{i}}{\partial x^{j}}$ で、列ベクトル $\boldsymbol{v}$ の $i$ 列成分は $\dfrac{\partial y^{i}}{\partial x^{m}},$ $O$ は零行列です。
それらを並べた行列が $J$ という意味です。
その行列式は $m$ 行目で余因子展開することにより求めることができ、
\begin{eqnarray} \det J(\boldsymbol{y},\boldsymbol{x}) &=& \det \begin{pmatrix} X & \boldsymbol{v} \\ O & \dfrac{\partial y^{m}}{\partial x^{m}} \end{pmatrix} \\ &=& \frac{\partial y^{m}}{\partial x^{m}} \det X \end{eqnarray}
ここで、$M$ は向き付け可能なので $\det J(\boldsymbol{y},\boldsymbol{x})>0$ ですね。
$\dfrac{\partial y^{m}}{\partial x^{m}}$ も正値関数なので $\det X$ は正になります。
よって $\partial M$ も向き付け可能になりますね。
これでストークスの定理を理解することができます。
証明はめんどくさいので文献を見てみてください。
これはどういう意味かというと、$M$ での積分を $\partial M$ での積分で考えることができるということです。
次元をひとつ落として考えることができるので非常に強力な定理なんですね。
ベクトル解析の $3$ 次元のストークスの定理やガウスの発散定理などもすべてストークスの定理から導くことができます。
やってみましょう。
ここで、力学の詳しい記述についてはあえてここでは述べません。
詳しく知りたい方は本を参照してください。
ド・ラームコホモロジーについても詳しくは解説しませんが、ひとつ重要な定義について述べておきます。
ここで、$\omega$ が完全形式ならば閉形式にもなります。逆は常に成立するとは限りません。
押し出しと引き戻し
ここでは2つの多様体の間に写像が存在するとき、微分形式やベクトル場がどのように変化するかを見ていきます。
$m$ 次元可微分多様体 $M$ と $n$ 次元可微分多様体 $N$ の間に $C^{\infty}$ 級写像 $f: M \rightarrow N$ が存在するとします。
$M$ 上の点 $p$ での座標近傍を $(U^{M}, \varphi^{M})$ とし、局所座標を $\varphi^{M}(p)=(x^{1},\cdots,x^{m})$ のように書きます。
同様に $N$ 上の点 $f(p)$ での座標近傍を $(U^{N}, \varphi^{N})$ とし、局所座標を $\varphi^{N}(f(p))=(y^{1},\cdots,y^{n})$ のように書きます。
$\varphi^{M}(U^{M}) \subset \mathbb{R}^{m}$ に定義域を制限すれば、$\varphi^{N} \circ f \circ (\varphi^{M})^{-1} : \mathbb{R}^{m} \rightarrow \mathbb{R}^{n}$ というユークリッド空間の間の写像を得ることができます。
よって $y=\varphi^{N} \circ f \circ (\varphi^{M})^{-1}(x)$ と書くことができます。
ここで、本来 $\varphi^{N} \circ f \circ (\varphi^{M})^{-1}$ や $f \circ (\varphi^{M})^{-1}$ と書かなければいけない場合も文脈で明らかな場合は $f$ と書くことにします。
まずは接ベクトルの押し出し (pushforward) を見てみましょう。
ここで先に $f:M \rightarrow N$ が与えられているとき、$M$ 上の接ベクトルから $N$ 上の接ベクトルを求めることができます。
接ベクトルを $X_{p}=X^{\mu} \dfrac{\partial}{\partial x^{\mu}}$ とすれば、合成関数の微分よりその $f$ による押し出し $f_{\ast}X_{p}$ は
$$ f_{\ast}X_{p} :=\left . X^{\mu}\frac{\partial y^{\nu}}{\partial x^{\mu}}\frac{\partial}{\partial y^{\nu}} \right | _{\boldsymbol{y}=f(p)} $$
と定義されます。
また、$M$ と $N$ が同じ次元であり $f:M \rightarrow N$ が微分同相写像であればベクトル場 $X$ の押し出し $f _{\ast} X$ が得られ、
$$ (f _{\ast} X)(f(p)) := \left . X^{\mu}(p) \frac{\partial y^{\nu}(x)}{\partial x^{\mu}} \frac{\partial}{\partial y^{\nu}} \right | _{\boldsymbol{y}=f(p)} $$
と定義されます。
次に微分形式の引き戻し (pullback) を定義しましょう。
$N$ 上の $k$-形式 $\omega=\dfrac{1}{k!} a_{\mu_{1} \cdots \mu_{k}}(y) \text{d} y^{\mu _{1}} \wedge \cdots \wedge \text{d} y^{\mu _{k}}$ に対し、その引き戻し $f^{\ast} \omega$ は
$$ f^{\ast} \omega := \frac{1}{k!} a_{\mu_{1} \cdots \mu_{k}}(f(p)) \left( \frac{\partial y^{\mu_{1}}}{\partial x^{\nu_{1}}} \text{d} x^{\nu_{1}} \right) \wedge \cdots \wedge \left( \frac{\partial y^{\mu_{k}}}{\partial x^{\nu_{k}}} \text{d} x^{\nu_{k}} \right) $$
と定義されます。
定義ばかりでは面白くないので問題を解いてみましょう。
この押し出しと引き戻しが後で活躍することになります。
ここから先は第3章に続きます。
微分幾何入門(森北出版)の解説 <第1章 -多様体->
この記事は「ゲージ理論・一般相対性理論のための微分幾何入門」(森北出版) を読んで私がつまづいた部分や、分かりづらいと思った箇所を補完する記事となっています。
元々このような記事を書くに至った経緯としては、私が数学書を読むときに手書きのノートを一切使わずパソコンで文章を書きながら勉強していたからです。
どうせならその文章をみなさんと共有したいと思い、この記事を書くことにしました。
なお、「微分幾何入門」の著作権を侵害する意図はありませんし、この記事のみで学習が完結するような内容にもなっていません。
書籍のほうが豊富な図と解説があり、演習問題と解説もあるので必ず書籍を手元に置きながら読み進まれることをおすすめします。
私も勉強途中の身であり、誤植がある場合もあります。
その場合は遠慮せずコメント欄で指摘・質問していただけると助かります。
それでは始めましょう。
位相空間の定義
多様体の話をする前に、位相空間の定義について述べておかなければいけません。
いきなりこんな定義を見せられて頭がくらくらすると思いますが、これを完璧に理解する必要はないです。
ただこれが同相写像を定義する上で必要なだけです。
重要なのは同相写像のほうです。
定義を述べましょう。
例を見たほうが早いでしょう。
これで可微分多様体の定義をする準備が整いました。
可微分多様体のアイデア
意味不明ですね。笑
パラコンパクトハウスドルフとかわからなくてもいいですが、重要なのは(iii)です。
感覚的に説明すると、$\varphi_{\mu} \circ \varphi_{\lambda}^{-1} : \varphi_{\lambda} (x) \mapsto \varphi_{\mu} (x)$ が $C^{\infty}$ 級関数であるというのは「$M$の開集合で被った部分があるとき滑らかに張り合わせることができる」という感じです。
この性質が後ほど活躍することを頭に置いておいてください。
とはいっても、例を見ないとしょうがないですね。
ここで微分同相という言葉を紹介しておきましょう。
感覚的に言えば、微分同相写像とは $M$ と $N$ を形を保ちながら滑らかにつなぐ写像という意味です。
この定義は後ででてくるので覚えておいてください。
接ベクトル
試しに $\mathbb{R}^{3}$ 上で $\alpha<t<\beta$ によって媒介変数表示された曲線 $C : \boldsymbol{r}(t)=(r^{1}(t),r^{2}(t),r^{3}(t))$ を考えましょう。
このとき、$C$ の $t$ による接ベクトルは
$$ \frac{\text{d}\boldsymbol{r}(t)}{\text{d}t}=\left( \frac{\text{d}r^{1}(t)}{\text{d}t}, \frac{\text{d}r^{2}(t)}{\text{d}t}, \frac{\text{d}r^{3}(t)}{\text{d}t} \right) $$
となります。
これは曲線 $C$ の接線方向を向いているので接ベクトルと言われます。
ここで、$\mathbb{R}^{3}$ 上のスカラー場 $f:\mathbb{R}^{3} \rightarrow \mathbb{R}$ を考えてみましょう。
すると、そのスカラー場 $f$ の $\boldsymbol{r}$ に沿った $t$ による微分は合成関数の微分より
\begin{eqnarray} \frac{\text{d}f}{\text{d}t}&=&\frac{\partial f}{\partial r^{1}} \frac{\text{d} r^{1}}{\text{d} t}+\frac{\partial f}{\partial r^{2}} \frac{\text{d} r^{2}}{\text{d} t}+\frac{\partial f}{\partial r^{3}} \frac{\text{d} r^{3}}{\text{d} t} \\ &=&\left( \frac{\text{d} r^{1}}{\text{d} t} \frac{\partial}{\partial r^{1}} + \frac{\text{d} r^{2}}{\text{d} t} \frac{\partial}{\partial r^{2}}+ \frac{\text{d} r^{3}}{\text{d} t} \frac{\partial}{\partial r^{3}} \right)f \\ &=& \left( \frac{\text{d} r^{i}}{\text{d} t} \frac{\partial}{\partial r^{i}} \right) f \end{eqnarray}
となります(最後はアインシュタインの縮約記法で書いています)。
この $\dfrac{\text{d}}{\text{d}t}=\dfrac{\text{d} r^{i}}{\text{d} t} \dfrac{\partial}{\partial r^{i}}$ を微分作用素とみなすことで、接ベクトルをうまく定義できるというわけです。
また、連鎖律をもって接ベクトルを定義することもできます。
接ベクトル束
$m$ 次元可微分多様体 $M$ のある座標近傍 $(U_{i},\varphi_{i})$ が存在して、$p \in U_{i}$ に対して $\varphi_{i}(p)=(x^{1},\cdots,x^{m}) \in \mathbb{R}^{m}$ であるとします。
この状況を「点 $p$ での局所座標が $(x^{1},\cdots,x^{m})$ である」といいます。
その条件のもと、その点 $p$ での接ベクトルを集めた集合 $$ T_{p} M := \left \lbrace \left. X^{\mu} \dfrac{\partial}{\partial x^{\mu}} \, \right | \, (X^{1}, \cdots, X^{m}) \in \mathbb{R}^{m} \right \rbrace $$ を点 $p$ での接空間 (tangent space) といいます。
ここでも縮約記法を使っています。
さらに、そのすべての接空間の和集合を接ベクトル束 (tangent bundle) といい、 $$ TM := \bigcup _{p \in M} T_{p} M $$ で定義します。
この接ベクトル束は特別な性質を持っていて、それはのちのち解説するとしますがこれによりベクトル場が定義できます。
注目すべき点は $\boldsymbol{A}(p) \in T_{p}M$ です。
この定義がのちのち活躍することになります。
また、$\boldsymbol{A},\boldsymbol{B}$ をベクトル場として新しく作られる作用素 $\boldsymbol{B} \boldsymbol{A}$ はどのように定義したらよいのでしょうか。
ここで定義したベクトル場は1階の偏微分であることから、 $\boldsymbol{B} \boldsymbol{A}$ は2階の偏微分となります。
ここで、あとから出てくるベクトル場の交換子積について言及しておきましょう。
リー括弧と言われる記号を導入します。
$\boldsymbol{A}$ と $\boldsymbol{B}$ がともに可微分多様体 $M$ 上のベクトル場であるとき、 $[\boldsymbol{A},\boldsymbol{B}]$ もまたベクトル場になります。
証明はここではしないので本を見てください。
双対ペアリング
双対ペアリングについて話す前に双対空間の話をしましょう。
$V$ を $n$ 次元線形空間とします。
このとき、 $V$ の双対空間 $V^*$ を次で定めます:
$$ V^* := \text{Hom}(V,\mathbb{R}) $$
つまり、$V^*$ は $V$ から $\mathbb{R}$ への線形写像をすべて集めた集合であるということです。
このとき、$V^*$ もまた $n$ 次元線形空間となります。
$V^*$ は線形写像の集合であることから、線型空間の定義をすべて満たします。
このように、任意の線形空間に対してその双対空間を定義することができます。
もちろん接空間に対しても双対空間を定義することができ、$T^*_pM$ を点 $p$ での余接空間 (cotangent space) といいます。
余接空間の元 $\omega \in T^*_pM : T _pM \rightarrow \mathbb{R}$ を余接ベクトルまたは $1$-形式と呼びます。
さらにそのすべての余接空間の和集合を余接ベクトル束 (cotangent bundle) といい、 $$ T^*M := \bigcup _{p \in M} T^\ast _{p}M $$ で定義します。
ここで、もとの線形空間 $V$ の基底に対応する $V^*$ の双対基底というものがあります。
このとき、もとの基底を行列 $A$ によって変換したとき必ず双対基底は $A^{-1}$ で変換されるという特徴があります。
ここで、偏微分作用素と全微分の基底の変換則を見ておきましょう。
座標 $(\boldsymbol{x})$ が $ij$ 成分が $a^{i}_{j}$ の行列 $A$ によって変換されて座標 $(\boldsymbol{u})$ になるとき、つまり
$$ u^{\mu}=a^{\mu}_{i} x^{i} $$
(縮約記法)を考えます。
このとき、$A$ には逆行列が存在して $A^{-1}$ の $ij$ 成分を $b^{i}_{j}$ とおくと、
$$ x^{\mu}=b^{\mu}_{i} u^{i} $$
が成立します。偏微分は連鎖律より、
\begin{eqnarray} \frac{\partial}{\partial u^{\mu}} &=& \frac{\partial x^{i}}{\partial u^{\mu}} \frac{\partial}{\partial x^{i}} \\ &=& \frac{\partial}{\partial u^{\mu}}(b^{i}_{j}u^{j}) \frac{\partial}{\partial x^{i}} \\ &=& b^{i}_{j} \delta^{j}_{\mu} \frac{\partial}{\partial x^{i}} \\ &=& b^{i}_{\mu}\frac{\partial}{\partial x^{i}}. \end{eqnarray}
ここで、偏微分の分母にある添字は逆転すると考えてアインシュタインの縮約記法を適用します。
全微分は線形性より、
\begin{eqnarray} \text{d}u^{\mu}&=&\text{d}(a^{\mu}_{i}x^{i}) \\ &=& a^{\mu}_{i} \text{d}x^{i}. \end{eqnarray}
偏微分と全微分は互いに逆の関係で線形変換されることがわかりました。
これは基底と双対基底の関係と全く同じです。
なので接空間の元として偏微分作用素、余接空間の元として全微分を取ることができます。
それによって余接空間を定義し直すと、
$$ T^{\ast}_{p} M := \left \lbrace \left. \omega _{\mu} \text{d}x^{\mu} \, \right | \, \omega _{\mu} \in \mathbb{R}^{m} \right \rbrace. $$
これで双対ペアリングが定義できます。
$\delta^\nu _\mu$ はクロネッカーのデルタです。
$\mu=\nu$ ならば $\delta^\nu _\mu=1,$ $\mu \neq \nu$ ならば $\delta^\nu _\mu=0$ というだけです。
いちいち $\langle, \rangle$ と書くのはめんどくさいので $\text{d} x^{\nu} \left( \dfrac{\partial}{\partial x^\mu} \right) = \delta^{\nu} _{\mu}$ と書いてしまう場合もあります。
テンソル
ここでテンソルを定義しましょう。
テンソルはあとあと一般相対性理論で大活躍するツールなので紹介しておきます。
$\mathbb{R}$ 上の線形空間 $V, V'$ を考えます。
$V$ の基底として $e_{1}, \cdots, e_{m}$, $V'$ の基底として $e'_{1},\cdots,e'_{n}$ を取ります。
このとき、テンソル積 $\otimes$ という演算を定義して新しい線形空間を作りましょう。
集合の直積 $\times$ の進化バージョンだと思ってください。
重要なのはただ単に集合の直積を取っているのではなくそれが双線形写像であり新たな線形空間をなすところです。
重要な性質をいくつか挙げておきましょう。
ここで、$(r,s)$ 型テンソルというものを考えることができます。
簡単に説明すると、線形空間 $V$ とその双対空間 $V^\ast$ を合わせ $\underbrace{V \otimes \cdots \otimes V}_{r} \otimes \underbrace{V^{\ast} \otimes \cdots \otimes V^{\ast}}_{s}$ という線形空間を作ります。
これが混合テンソル空間と言われるもので、$r$ 階反変 $s$ 階共変のテンソル空間または $(r,s)$ テンソル空間といい $T^{r}_{s}(V)$ と書きます。
話を多様体に戻しましょう。
$m$ 次元可微分多様体 $M$ の点 $p$ での局所座標が $(x^{1},\cdots,x^{m})$ であるとき、その点での $(r,s)$ テンソルを
$$ T=T^{\mu_{1} \cdots \mu_{r}} _{\nu_{1} \cdots \nu_{s}} \frac{\partial}{\partial x^{\mu_{1}}} \otimes \cdots \otimes \frac{\partial}{\partial x^{\mu_{r}}} \otimes \text{d} x^{\nu_{1}} \otimes \cdots \otimes \text{d} x^{\nu_{s}} $$
で表します。
このように表される元の全体を $T_{p} \,^{r}_{s}(M)$ と書きます。
そしてこれを多様体の全体にわたって集めた和集合を $(r,s)$ テンソル場といい $T^{r}_{s}(M)$ で表します。つまり、
$$ T^{r}_{s}(M)=\bigcup_{p \in M} T_{p} \,^{r}_{s}(M) $$
です。
ここから先は第2章に続きます。